「コーポレートガバナンス・コード」をご存知だろうか。上場企業が守るべき行動規範のことで、日本は先進国でも後発、2015年に東京証券取引所が取りまとめた

行動規範と言われてもいまいちピンとこないが、「企業の取締役会が透明性を保ちつつ、迅速に、正しく意思決定できているか判断する基準」といったものだ。上場企業が透明性を求められることは当然のことだが、その立ちふるまいをどう考えるべきか、いまいち知られていない。

これは、外部から見ての印象だけでなく、とうの取締役会の役員も理解していないケースが多いという。コーポレート・ガバナンスのトレーニングやエグゼクティブの採用などを手がける米ラッセル・レイノルズ ニューヨークオフィスマネージング・ディレクターのJack “Rusty” O'KelleyIII氏に話を聞いた。

米ラッセル・レイノルズ ニューヨークオフィスマネージング・ディレクター Jack “Rusty” O'KelleyIII氏

行動規範を第三者視点で評価

コーポレートガバナンス・コードは、あくまで「指針」であり、これを第三者機関より評価されて初めて機能する。その立場にあるのがラッセル・レイノルズだ。内部評価は1年に1回、外部評価は3年に1度が「(先行して導入していた)イギリスでは推奨されている」(O'Kelley氏)という。

コードの基本原則は5つ。

  • 株主の権利・平等性の確保

  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

  • 適切な情報開示と透明性の確保

  • 取締役会等の責務

  • 株主との対話

特に、日本市場ではこれまで、株主に対する説明責任を軽んじる傾向があったとラッセル・レイノルズではみる。同族企業や株主の持ち合いが比較的多い日本では、株式市場で企業価値の評価を受けるという意識が低く、取締役会の機能不全に陥りがちだという。

実は、東京証券取引所がガバナンス・コードを制定してからもこの傾向は少なからず見て取れる。ラッセル・レイノルズの調べによれば、取締役会の実効性評価を行った企業はおよそ8割程度とみられるが、ラッセル・レイノルズなど第三者機関による外部評価は1/3程度にとどまる見込みだという。

「取締役会が機能しているかどうかを外部から判断するのは透明性の確保という意味でも重要。例えば、同族企業の持ち合いで多くを占めているある企業を評価した例では、1年間でかなり効果が上がったという内部評価にも繋がった。同族企業は特に、内部、外部ともに評価を受けるという判断自体が一般的な企業と比較してインパクトがある。外部評価は『ベストプラクティス』を見られるいい機会、ということを意識してもらいたい」(O'Kelley氏)

基本原則から見て取れるように、取締役会の評価は必ずしも業績の結果というわけではない。役員の自己評価アンケートやインタビュー、業界ベンチマーク比較など、定量的、定性的な評価の両面で見られることになる。

「スチュワードシップ・コードが機関投資家の行動規範であるのに対し、コーポレートガバナンス・コードは企業の行動規範。つまり、外部から『この企業は第三者機関から評定される体制作りを行っている』と認識されることで、中長期的に企業価値の向上にも繋がる」(O'Kelley氏)