Appleの新型スマートフォン、iPhone Xには、これまでのiPhoneに搭載されてきた指紋認証「Touch ID」に代わり、顔面認証機能「Face ID」が、新たな生体認証として採用された。ホームボタンが廃止されたことでTouch IDの指紋センサーを収める場所がなくなったが、それを代替し、ロイヤルティを高めるのに不可欠な技術と位置づけられよう。
iPhone X発売を控えた10月中旬、The New Yorkerのイベントに登壇したAppleのCDO、ジョナサン・アイブ氏は、Face IDの開発が5年前から始まっていたことを明かした。5年前といえば2012年。AppleがiPhone 5sに初めてTouch IDを採用する前年のことだ。
Touch IDは指紋を360度、どの向きからも読み取ることができるセンサーで、ホームボタンに内蔵されていた。iPhone 6では、モバイル決済システム「Apple Pay」を投入し、Touch IDの重要性をアピールするのに十分な説得力を持たせる状況を作り出した。また、iOSデバイスを企業に売り込んでいくに際しても、標準的な生体認証機能は、有効な存在となっている。iPhone 8に搭載されているTouch IDは第二世代のセンサーとなっており、体感できるほどその認識速度が向上した。ポケットの中からiPhoneを取り出す際に、ホームボタンを親指で押しながら目の前に持ってくると、ロック解除が済み、ホーム画面が表示された状態でiPhoneを使い始めることができる、「早撃ちガンマン」のような操作も実現していた。
Face IDの開発は、Touch IDが高速化し、ロック解除、モバイル決済、アプリのセキュリティなどその活用範囲を拡げる中、進んでいた、ということになる。当初はiPadほどのサイズのデバイスに、弁当箱のような巨大なセンサーモジュールを搭載したプロトタイプから始まったという。そして、開発に携わった人々が口を揃えるのは、苦労の連続だった、ということ。イベントでアイブ氏も「プロセスを楽しんできた」と振り返っていた。