気長なサポートが、子どもの成長に繋がる
――子どもたちと約20年にわたって接してきた中で、今と昔で変化や違いを感じることはありますか?
「うちの子は向いていないのでは?」とか「いつも泣いてばかりで他の子に比べて遅れているのでは?」とか、すぐに結果を求めてしまう親御さんが増えているように思えます。でも、レッスンを始めてすぐに結果が出るわけがありません。お芝居やダンスの技術もそうですが、何より"感性"を磨くことは時間がかかります。
――それは、家庭の育児でも同じことが言えると思います。
焦らず見てあげて欲しいですね。大舞台やオーディションでは、いくらダンスも芝居も上手だからといっても、なかなか本領を発揮することはできません。そこで勝ち残るためには強い心、つまりメンタルを育てることが大切なのです。大人だって、急に100人の前でスピーチをしてほしいと言われても、なかなか話せませんよね? 子どもだって同じです。焦らずに、取り組む姿勢や過程を大切にしてほしいです。
――つい、もっとこうしたら? とか口出ししてしまう親心もありますが、それも良くないことでしょうか?
しっかりとコミュニケーションをとったうえで、アドバイスをするのはいいですが、頭ごなしに「●●がダメ!」「●●ができてない!」と否定してしまうのは良くないことだと思います。自分の幼い頃を思い出して欲しいのですが、"親の言葉"というのは子どもにとって良くも悪くも影響力は絶大です。一方的な否定の言葉は子どもたちを傷つけ、やる気を阻害してしまう原因にもなります。
子どもだけでなく、親御さんもメンタルを鍛えることが大切です。オーディションに落ちたりお芝居がうまくいかなかったりすると、子どもたちよりも親御さんの方がショックを受けてしまい、レッスンをやめてしまうということも珍しくありません。子どもが挫折する姿を見たくないんですよね。でも、人生で挫折を経験することは幾度となくあります。子どもたちはそのたびに強くなっていくものなので、親御さんも一緒に強い心を持つように心がけて欲しいです。
――他にも、よくあるご相談はどんなものがありますか?
「子どもにやる気が感じられない」「やる気があるのかわからない」というお声はよく聞きます。例えば、オーディションに落ちたとき、子どもが「全然ショックじゃないよ」と平然に振舞っている姿を見ると、親としては「この子、やる気あるのかしら」と不安に思ってしまうかもしれません。
でも、レッスン場だと、そんな子に限って泣きながら悔しがっている姿を見せることがあります。お母さんに見せる顔と、私たちに見せる顔が違うことはよくあるんですよ。なので、表面上で子どものやる気を判断するのは尚早かもしれません。 親御さんには、子どもたちに伝えてほしいのです。自分がやりたいことを見つけて、やることができるというのは幸せなこと。でも、本当にやりたいことというのは、そのことに本気でぶつかり、一生懸命努力したなかでしか見つけられないということを。
子どもたちには、時間をかけてでも、そうしたなかで自分が本当にやりたいことを見つけていってほしいですし、私たちも本気で応援したいと思っています。