居酒屋に行きにくい“おひとり様”をターゲットとし、吉野家が2015年から始めた「よし呑み」にしてみても、牛丼と軽く一杯を組み合わせて“ちょい飲み需要”を取り込もうとした戦略ではあったが、結果として、女性客の足は更に遠ざかる結果となった。多くの客を呼び込むはずの戦略が、逆に一部の客に選ばれない結果を招くとは、皮肉なものだ。
そんなわけで、吉野家にとって女性客の取り込みは長年の課題なのだが、その解決につながるかもしれないのが、新型店舗への取り組みだ。
吉野家の新型店舗は、まだまだ進行形
吉野家は店舗改装と並行して実験店舗の設定を行っている。代表的なのは恵比寿駅前店だ。ここではカフェテリア方式を採用しており、利用客は商品を受け取り、食べ終わったら返却口に運ぶスタイルとなっている。特筆すべきは、あのU字カウンターが存在しないことだ。
実際に恵比寿駅前店を訪れてみると、無料Wi-Fiやコンセントは当然のように設置されており、なんと喫煙室も存在していた。喫煙室はドアのついた専用スペースとなっており、愛煙家にも配慮した設計となっている。店舗スペースも広めでゆったりしており、目線を遮るように設置された人工の植栽からは、利用者の視線への配慮が感じられた。キッチンにはフライヤー(揚げ物の調理機器)を設置し、他の店舗にはない「からあげ丼」なども提供している。
また、秋葉原店はU字カウンターそのものは存在しているものの、座席配置がギザギザの形になっているため、目の前の客と目線が合ってしまう気遣いがない。座席はおひとり様仕様になっており、はしや紅しょうがなどは1セットずつ置かれている。なんと、コンセントも座席ごとの設定だ。
明るい店内、かつ丼もメニューに
そして大井町西口店は、更に進化した店舗という印象だ。まず、晩ごはんのメニューがやたらと多い。座席は対面式カウンター10席、外に向いたカウンターに5席、2人掛けのテーブル席が5セットという配置で、計25名で一杯となる設計だ。フライヤーの用意はもちろんのこと、「かつ丼」までメニューに載っている。
日曜日の夕方に大井町西口店を訪問してみたが、家族連れや若い夫婦などで席は埋まっていた。夫婦と思しき高齢の2人づれを見ると、男性客がビールを傾ける傍らで、女性客が食事していた。従来の吉野家ではあまり見かけないシーンだ。加えて、外から見ても分かることだが、店内がとても明るい。まるでコンビニではないかと感じられるほど、店内の明るさが印象深かった。ちなみに、大井町西口店にも喫煙室がある。