――僕も拝見していて、ラッキーってすごい発明だなと思いました。
発明なんですよ。ラッキーという発明がなければ『キュウレンジャー』は成立しなかった。
――でもちゃんとアンラッキーの回(第11話「宇宙を救う3つのキュータマ」)があって、ただラッキーなだけではないということが描かれましたよね。
ワンクール目ではあそこに着地させようという狙いがありました。ラッキーのアンラッキーを描くことで、みんなと同じだ、11人で行くぞ!というところはやりたかった。
――毛利さんはキャラクターを作る際にモチーフは決めるんですか?
あまり決めないですね。過去に自分が書いた作品の中に求めることはたまにありますが、あくまで会議とかで説明する際にみんなにイメージしてもらうためにモチーフを使うくらいかな。
――ラッキーはラッキーだけで勝っていくとなると、返って魅力的なキャラに見せるためのバランスが難しいですよね。ちょっとダメなヤツになりかねない。脚本上の工夫はありましたか?
品があるように、バカに見えないようにしようと気を付けました。とことんラッキーでポジティブでという設定を普通に人が演じるとすごくバカに見えちゃう可能性もあるんですよ。だから最初からすごく言っていたのは、ちゃんと「よっしゃラッキー!」とか勢いで「行くぜ!」って言った時も品があるというか、そういう役者を探そうね、キャラクターもそっちにしようねと。岐洲匠くんはそういう意味でも彼でよかったなってあらためて思いますね。最初から品があるんですよね。嫌じゃない、バカに見えないというのが大事だなと。
――初めから全宇宙が支配されているという設定はどうしてなのでしょうか。
これは東映の望月卓プロデューサーからだったんですけど、「最近のスーパー戦隊は戦うことがメインじゃないことが多いよね」という話があったんです。例えば『ジュウオウジャー』だったら「ジュウランドに帰る」、『トッキュウジャー』であれば「家に帰る」ですよね。一番に「戦う」がきていない。だから「戦う戦隊を作ろう」というのが最初だったんです。
戦うためには敵は多いほうがいいだろうと。敵が攻めてきた、迎え撃てというのが基本的な「スーパー戦隊」のフォーマットなんですけど、それを逆にしよう。「敵がいるから攻めに行く」「殴り込み」っていうのがそもそものコンセプトで。だから最初から支配されている状況で、じゃあ次はここを助けに行きますよといって殴り込みにいく。『水戸黄門』のような時代劇の形式でもある。ヒーローが諸国を漫遊してやっつけていくっていう企画のコンセプトが残って、ショウグン・ドンアルマゲとかカローとかダイカーンとか時代劇用語が残っています。
――それは多人数であることにもプラスになっているのでしょうか。
そうですね。劇中でもありましたけど、敵の「11対1って卑怯じゃないか」というのに対して、「お前ら全宇宙を支配していてガタガタいうんじゃねえ」っていう。僕もなんとなく思っていたんですけど、警官が犯罪者に対して1対1で挑むのはよくないと思うんですよ。それは「待て待て」ってなる。悪いヤツは数で制圧してくれっていうのがあるので。悪いヤツなんだから……っていったら変なんですけど、「仮面ライダー」と「スーパー戦隊」の一番の大きな違いはそこかもしれないですね。「仮面ライダー」は正義と悪を悩み続けなければいけないというのがあるんだけど、「スーパー戦隊」はもうそこは悩むなという考えが自分の中ではありますね。
――「スーパー戦隊」と「仮面ライダー」を両方を書かれていて、毛利さん的にはどのような違いがあると思われましたか? もちろん関わり方の違いもあるとは思うのですが。
実は僕としてはあまりないんですよ。本当はあるべきなんでしょうけど。どちらかといえば「スーパー戦隊」にあまり向いていないというか、「仮面ライダー」的な思考で「スーパー戦隊」を書いちゃっているなという思いはあるかもしれません。『キュウレンジャー』はタテ軸が強いですよね。もうちょっと「スーパー戦隊」シリーズって単発エピソードを重ねていく形式が多いんですけど、どちらかというとそっちが苦手なんだと思います。一本とおしてダイナミックなストーリーのほうが得意なのは、ずっと舞台で長編を書いてきたというのもあるのかもしれません。でも一回『キュウレンジャー』みたいにタテ軸が強いものをやってきたから、今度は逆にヨコ軸が強いものとかやってみたいかな。あ、そうだ5人の戦隊とか描いてみたいですね(笑)。いても6人くらいで。
――いつもの……ですね(笑)。追加戦士も一人までしか認めない!という感じでしょうか。
そうそう。でも12人以上はさすがに無理だと思います。とりあえず『キョウリュウジャー』の10人を超えましたんで。
――ここからは「歴代最多」をめぐってチキンレースですよ。
でもこれ以上キャラクターを増やしてしまうと、展開としてそれぞれのキャラクターが薄くなっていくだけだと思っています。そもそも48話前後しかない中で12人ですから、担当回を一つ作ってもそのキャラクター毎に4つしか担当回がない計算になります。そして、担当回だけでは成り立たないのが「スーパー戦隊」なので。
――人数が多い中で、決め台詞がキャラ付けに大きな役割を果たしていますが、数々の印象的なフレーズはどこから?
「よっしゃラッキー」は最初のほうから普通に書いていたんですよ。それを柴崎貴行監督から「もうこれ決め台詞にしたほうがいいよ」と提案があったので連呼するようになったんです。なので、わりと普通に書きます。普通の台詞が書けないタイプで、大げさな台詞ばかり書く。で、「これいいね」って言われると多用する。そうなると決め台詞みたいになっていくという。
ツルギの「伝説」も非常に気に入っていて。「すなわち……」とか、「伝説」おじさんなんですよね。でも時代劇も少なくなっているので、『桃太郎侍』の口上とかかっこいいじゃないですか。せっかくヒーローを描くやる以上、ああいう口上をちゃんとみせたいと思って描いています。もともと日本の伝統的な歌舞伎から始まる"見えを切る"ようなかっこよさを考えていますが、わりと自然な流れで描いているつもりです。
――『キュウレンジャー』、「スーパー戦隊」ファンの方たちはイベントを通してキャストの方々と生で接する機会が多いこともあり、実は舞台とも親和性が高いのではないかと思っています。毛利さんが考える、舞台の魅力とは?
『キュウレンジャー』でも多くの熱演がありましたよね。例えば、ナーガとバランスがアツい戦いの中で二人の関係が復活していくのを、舞台だと目の前で見ることができる。フィルターなしで展開される生の舞台は、テレビの100倍感動します。演技に対しての考え方が変わるというか、演技というより"本当"しかそこにはないんですね。役者が役に"なりきっている"というとそれもウソになってしまうんですけど、本当にその役に"なった"役者がそこにいて、本当にその場で生きるか死ぬかの苦悩をしている。そこにまったくウソはないんですよね。その"本当"にみなさん驚くと思います。
――『キュウレンジャー』ではまった人はすごく楽しめそうですね。
絶対にはまると思います。『キュウレンジャー』をおもしろいと思ってくれたのであれば、この作品は絶対おもしろいはずです! 舞台で見る"本当"を楽しみにきてください。劇場でお待ちしております!
【後編】ではラッキーともう一人、『キュウレンジャー』の大きなポイントになったキャラクターが明かされます。11月26日掲載予定です。
少年社中20周年記念第一弾 少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』
冥府より蘇った「東照大権現・イエヤス」によって世界は征服された。 立ち上がったのは…… 7人の"極悪人"! この物語の二人の主人公、"マクベス"と"トクガワイエミツ"! 二人を巡る物語は混沌の中、様々な世界を駆け巡り、やがて一つに重なっていく。 "悪"対"悪"の最終決戦(ラグナロク)の果てに誰が生き残るのか? 世界をその手に収めるのはいったい誰なのか? 誰も観たことがない"ダークヒーロー"がここに誕生する。
脚本・演出:毛利亘宏
出演:井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介
長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之
鈴木勝吾、宮崎秋人 / 椎名鯛造 、佃井皆美、相馬圭祐、丸山敦史
唐橋充、松本寛也、細貝圭 / 大高洋夫
日程:東京会場:サンシャイン劇場 2018年1月6日(土)~1月15日(月) 15st
大阪会場:サンケイホールブリーゼ 2018年1月20日(土)・21日(日) 4st
愛知会場:岡崎市民会館あおいホール 2018年1月27日(土) 2st
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