さらにKDDIは、auブランドの顧客流出防止にも積極的に打って出ている。その最たる例として挙げられるのが、今年7月に導入した「auピタットプラン」「auフラットプラン」である。これらは端末価格を値引かないことで、通信料金を安くするというもの。auピタットプランの場合、各種割引やキャンペーンを適用することで月額1980円から利用できるなど、MVNOに迫る低価格を実現したことが話題となった。
こうした一連の施策によって、KDDIはグループ外のMVNOへの流出抑止に成功しつつある。実際11月1日の決算会見で、代表取締役社長の田中孝司氏は「番号ポータビリティによるグループ外への流出はほぼ止まっており、アンダーコントロールな状況になりつつある」と話している。auユーザー自体の減少はまだ止まっていないものの、傘下のMVNOへの流出が主となっているため、業績に与える影響は小さくなりつつあるようだ。
ワイモバイルで安泰のソフトバンク
出遅れを必死に挽回してきたKDDIとは異なり、低価格サービスを巡る競争で優位に立っているのはソフトバンクだ。同社はワイモバイルブランドを活用し、低価格を求めるユーザー向けのサービスをいち早く展開したことで、MVNOへの流出を抑えているのだ。
実際ワイモバイルは、月額2980円から利用できるなど低価格なサービスを提供する一方、ワイモバイルの前身となるウィルコムやイー・アクセスの資産を生かして全国にワイモバイルショップを展開。MVNOほどではないながらも大手キャリアよりは安く、MVNOよりサポートが充実しているという“ほどほど”のサービスがヒットしてユーザーを拡大。さらに型落ちながらもiPhoneを正規に取り扱ったり、テレビCMを積極展開したりするなどして人気を高め、低価格の通信サービスではトップシェアを獲得するに至っている。
もっとも、ワイモバイルが伸びればそれだけソフトバンク自体の売上は下がってしまうというデメリットもあり、ソフトバンクの国内通信事業は最近、減収減益傾向が続いている。
だがそれでも他社に顧客が流出するよりは、売上が落ちてでも自社内に顧客を抱えていた方がメリットが大きいのは確かなだけに、ソフトバンクがワイモバイルを強化する方針は今後も変わらないだろう。