ユーザー自身ではOC可能。OC時の挙動を調べてみた
それでは実際にOC設定を試してみた。ここで紹介するのは何度か設定を試し、今回の個体で動作に問題のないことを確認したものだが、GPUの個体差もあるのでお手持ちのカードですんなり動くかどうかは保証できない。
お約束の言葉になってしまうが、この設定を試し、グラフィックスカードを壊してしまっても責任はとれないのでご注意いただきたい。また、OCによる故障はメーカー・販売店の保証の対象外であることを理解した上で、あくまでも自己責任の範囲で楽しんでいただきたい。
今回はCore Voltageを+10%、Power Limitを129%に、Temp Limitを90度に、Core Clockを+143MHz(ベース1,750MHz/ブースト1,826MHz)に、Memory Clockを+136MHz(8,280MHz)に調整し、合わせてファンの回転数も静音の範囲で若干引き上げている。
OC状態のクロックや温度を確認
この状態で、3DMark Fire Strikeを実行した際のログを見てみよう。
まずGPU Clock。GPU-Zから見たブーストクロックは1,826MHzだがGeForceの場合はあくまで目安であるため、これ以上のクロックで動作することもある。OCをしてなくても最大1,860MHzで動作、これに対してOC時は2,025MHzになった。GPU負荷がかかった状態で最頻値を調べてみると、リファレンスクロックの状態では1,809.5MHz、OC時は1,987MHzだった。およそ180MHz程度高いクロックで動作していることが分かる。
この時のGPU温度は、グラフ2のとおり。ファン回転数を引き上げているため、OC時のほうがむしろ冷えている。その上で、動作音が気にならない程度に調節したので、このくらいの設定であれば性能と快適さが両立できると思われる。なお、最大温度はリファレンスクロック状態が68度、OC時が62度、最小温度は39度、33度となった。
メモリクロックは設定どおりの値が出ている。
GPUパワー(消費電力)については、ワットチェッカーではなくGPU上のセンサーから取得した情報となる。最大値はリファレンスクロック状態が215W、OC時が262W。OCによって50W近く消費電力が増えている。また、これはGPUのみであるため、メモリのOC分を足せばさらに増加する。補助電源コネクタを追加し、電源回路も強化したモデルの方がOC向きである。
"GTX 1080超え"はユーザーの手腕しだい
・3DMark v2.4.3819(グラフ5~8)
では、パフォーマンスを見ていこう。まず3DMark。3DMarkでは、Ice StormからFire Strike Ultraまでのテストでは、GTX 1070 TiのOC時はGTX 1080のやや下で推移する。一方、GTX 1080を超えたのがTime Spy Performanceと同Extremeだ。OverallだけでなくGraphics Testでも上回る数値を見せているので、ほかの要因ではなくグラフィックス性能で上回ることができたと言えるだろう。
・Assassin's Creed Origins(グラフ9)
では実タイトルはどうだろうか。前回の検証に続き、「Assassin's Creed Origins」、「Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands」、「Rise of the Tomb Raider」の3つをテストしてみた。
Assassin's Creed Originsでは、GTX 1070 TiのOC時はGTX 1080に肉薄する結果だった。ただし1~2fps程度及ばなかった。今回のOC幅であれば、GTX 1070のリファレンスクロックよりはGTX 1080により近いフレームレートとなり、リファレンスクロック状態に対して3~4fpsの向上が見られた。
・Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands(グラフ10)
Tom Clancy's Ghost Recon WildlandsもAssassin's Creed Originsに近い結果と言えるだろう。GTX 1070 TiのOC時のポジションは、GTX 1080にわずかに及ばないくらい。ただしその差は1fps程度だ。リファレンスクロック状態と比較すれば1fpsどころか3fps以上向上することもある。
・Rise of the Tomb Raider(グラフ11)
Rise of the Tomb Raiderもここまでのテストと同様の傾向だ。3DMarkではDirectX 12のTime Spy系テストでGTX 1080を上回ったが、同じDirectX 12のRise of the Tomb Raiderでは傾向が異なるので、DirectX 12が鍵になるというわけではなく、あくまで負荷具合で逆転することもある、という程度だろうか。
GTX 1070 TiカードでOCデビューするのもアリ
このように、GTX 1070 Tiは、OCできないわけではなく、単にメーカーからプリセットが提供されないだけと捉えればよい。MSIのAfterburnerは、MSIがフリーウェアとして提供しているため、他社のグラフィックスカードでも利用可能だ。今回紹介したOC手順を参考に、OCにチャレンジしていただければ幸いだ。
現状におけるGTX 1070 Tiの初値はやや高めで、コストパフォーマンスがよいとはいえない。しかし、OC次第ではコストパフォーマンスが改善する可能性もある。それでもOCすることに不安があるのであれば、リファレンスクロックでしっかりGTX 1070 Tiより高いパフォーマンスを示すGTX 1080を選んだ方がいいだろう。
今回、短時間でGTX 1070 TiのOCをテストしたが、3DMarkのTime Spy系という一部のテストについてはGTX 1080を上回ることができた。実ゲームタイトルで超えられなかったのが残念だが、今回紹介した設定はそこまで煮詰めたわけではないので、もう少しオーバーヘッドはあるかもしれない。あと少しというところまでは性能が出ているので、これより上については、自身の手で探っていただきたい。