富士山、芦ノ湖、箱根外輪山を一望

箱根園港に着いたら、「箱根園水族館」や「ふれあいどうぶつランド だっこして! ZOO!」(ミニ動物園)などの施設がある「箱根園」の敷地と駐車場を抜け、龍宮殿本館を目指そう。龍宮殿本館は、もともと昭和13(1938)年に、静岡県の浜名湖の景勝地・弁天島に「浜名湖ホテル」として建てられた建物で、昭和32(1957)年に芦ノ湖畔に移築後、旅館「龍宮殿」として営業してきた。しかし、老朽化が進み、耐震工事が必要となったことなどから、2012年より休業に入り、2017年7月に"日帰り温泉"としてリニューアルオープンしたばかりだ。

宇治の平等院鳳凰堂をモデルにした龍宮殿本館(写真提供: プリンスホテル)

なにはともあれ、温泉に入ろう。浴場は男女それぞれに、内風呂と露天風呂がある。現在、男湯になっている風呂は、リニューアル前、男湯・女湯として使われていたものを改装した。一方の女湯は、リニューアルに当たって、芦ノ湖に向かって突き出るように、450平方メートルの新棟を増床して新設した新しい浴場だ。

同施設の最大のウリである、富士山・芦ノ湖・箱根外輪山の3つを一望の下に見渡せる絶景は、男湯・女湯のどちらからも楽しめる。男湯は歴史ある旅館建築ならではの風格ある造りに特徴があり、女湯は新しさや湖に溶け込むインフィニティープールのような造りに特徴があるなど、それぞれ趣きが全く異なる。両方の風情を楽しめるよう、交代制にできないかという要望もあがっているといい、今後、検討を進めたいそうだ。

ちなみに、プリンスホテルの箱根芦ノ湖地区事業戦略リーダーである稲葉健二さんによれば、オススメは夕暮れの時刻。露天風呂から望むシルエットになった富士山が、ことのほか美しいという。

女湯露天風呂から見た、シルエットになった富士山(写真提供: プリンスホテル)

なお、龍宮殿本館の食事処「富士」では、鎌倉時代に北条氏の姫君が朝夕の化粧水として使用していたと言われている箱根大平台の湧水「箱根姫の水」で作った木綿豆腐や、季節の素材を使った和食などを楽しめる。

「箱根姫の水たま肌もめん湯豆腐御膳」は税込2,390円(写真提供: プリンスホテル)

●information
絶景日帰り温泉 龍宮殿本館
住所: 神奈川県箱根町元箱根139
営業期間: 通年営業
営業時間(温泉): 10:00~20:00(最終受付19:00)
料金: 大人1,800円、小学生1,000円 幼児500円(税別、12歳以上は入湯税として50円が別途必要)

満天の星を求めて

さて、温泉でホッコリ温まったところで、湯冷めしないよう温かい服装をして、旅のシメに、満天の星と夜景を見に出かけよう。龍宮殿本館から徒歩5分ほどの場所に、箱根で最も標高が高い神山(1,438m)に次ぐ、2番目の高さ(1,356m)を誇る駒ヶ岳山頂までを結ぶ「箱根 駒ヶ岳ロープウェー」の乗り場がある。

通常期の駒ヶ岳ロープウェーは、上りが16時30分まで、下りが16時50分までの運行だが、2017年は10月27日~11月30日までの35日間、駒ヶ岳頂上付近での「星空天体観測&夜景ナイトツアー」が毎日開催されることに伴い、夜間特別運行が実施されている。

駒ヶ岳山頂から満天の星空と夜景が楽しめる「星空天体観測&夜景ナイトツアー」(写真提供: プリンスホテル)

星空天体観測&夜景ナイトツアーは事前予約が不要で、参加者は駒ヶ岳山頂広場に用意された望遠鏡や双眼鏡を使って星を観察したり、山頂広場に敷かれたシートの上に寝転んで星空を存分に眺めたりすることができる。また、参加者には「星座早見盤」がプレゼントされ、スタッフから星座早見盤の見方や、その日に見られる星空のポイントなどが、簡単に説明される。

星空観察のほか、駒ヶ岳山頂からの夜景も同ツアーの見所だ。富士山から沼津・三島・熱海の夜景のほか、日によっては夕日に赤く染まる赤富士や、雲海なども見られるという。なお、晩秋の箱根の夜はかなり冷え込むので、ツアー参加時は充分な防寒対策が必要だ。

●information
星空天体観測&夜景ナイトツアー
料金: 税込2,000円(ロープウェー運賃含む)
実施期間: 2017年10月27日~11月30日の毎日。悪天候時は中止となる場合があり、15:00前後に判断・決定
時間: 17:45~
※ロープウェー夜間特別運行時間は、上りが17:15/17:25/17:35、下りが18:20/18:30/18:40

行きは元箱根から箱根園までフェリーで来たが、帰りは無料循環バスを利用して元箱根に戻ろう。同バスはプリンスホテルが運行しており、施設利用者でなくても誰でも無料で乗車できる。日中から夕方にかけて、1時間1本運行されており、元箱根行きの最終バスは、龍宮殿本館前から19時3分に出発する。

紅葉が色付く芦ノ湖と神山(写真提供: プリンスホテル)

芦ノ湖周辺には今回紹介したほか、箱根神社や箱根関所、縁結びなどのパワースポットとして知られる九頭龍(くずりゅう)神社などもある。また、芦ノ湖周辺では例年、10月下旬に紅葉が色付き始め、11月上旬から中旬にかけて見ごろを迎えるので、この秋の旅行にもオススメだ。ただし、紅葉シーズンは渋滞でバスに遅延が発生することが多いため、余裕をもった計画を立てて出かけてほしい。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。大磯町観光協会理事。鎌倉ペンクラブ会員。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。