良いデザインは機能性と美しさを兼ね備えている
――先程、「デザイン哲学」と言われましたが、どのような考え方に基づいてデザインしているのか、もう少し詳しくお聞かせください
ボイド氏:私は当社に入社する前は、ソニーとナイキで経験を積みました。そこで学んだことの1つは「良いデザインは機能性と美しさを兼ね備えている」ということです。両方備えていて初めて良いデザインといえます。ユーザーの求める機能が備わっていないのにデザインだけ良くしようとしても、良いデザインにはならないと考えています。
デザインする上で、先程のXPS 13の箸のように、いろいろなところからインスピレーションは受けていていますが、基本はあくまでユーザーのニーズに合うことです。
製品のターゲットにするユーザーがその製品を使うとき、どんな服装をするのか、どんな仕事が多いのか、プライベートで何をするのか、ほかにどんな製品を使うのか観察します。どんなカメラを使うのか、どういう自動車に乗るのか、そういったことを分析して、それに共通する思想を反映するのです。
――製品のデザインを実現するうえで、苦労するところはどこでしょうか
ボイド氏:ユーザーのニーズを汲み取るところが一番難しいです。これは今回の4製品に限らず、すべての製品に言えるのですが、そこをしっかり理解しておかないといけません。最初の前提が間違っていると、後から出てくるデザインは的を外したものになってしまいます。
私が入社する前は、当社は自在なカスタマイズ性が重視されていて、デザインはあまり重視されていませんでした。デザインはユーザーの求めるものの先にあり、リサーチが重要なのだと社内で綿密にやりとりし、その方向性を定着されるまでは大変でした。
われわれがデザインを作る時、5年から10年先まで長いスパンで考えます。将来、世の中の動きや、ユーザーのニーズ、技術がどう進化していくのか、いろいろな観点からリサーチし、製品がどのように使われるのか想像するのです。暫定的なコンセプトからプロトタイプを作り、テストしてテクノロジーに落とし込みます。
狭額縁ディスプレイもそういう形で誕生しましたし、カーボンファイバーの素材を使うという決定もこうした過程を経ています。赤外線カメラや、ニアフィールドとファーフィールドに対応するマイクなども、綿密なリサーチの結果、実装に至ったのです。
――プレミアムラインの製品には、カーボンファイバーだけでなくアルミの採用にもこだわりを感じます。これらを採用した背景をもう少し詳しく教えてください
ボイド氏:高い品質と美しい仕上がり、しっかりしたパフォーマンスを実現する上で、カーボンファイバーとアルミの組み合わせが適していると判断しました。
カーボンファイバーは見た目が格好良いのもありますが、熱を逃しやすい特性を持っています。もし筐体をアルミのみにすると熱が内部にこもってしまいます。カーボンファイバーを使えば熱を通してくれます。軽量でありながら高い剛性を持つのも良い点です。
さらに製品には寿命がありますが、カーボンファイバーはリサイクルにも優れています。リサイクルするたびに劣化することがなく、何度も使えて環境にも優しいのです。
ちなみにカーボンファイバーは、プレミアムラインだけでなくすべての製品でどこかしらに使っています。表に出ているところだけでなく、内部の見えないところにも使っています。また、当社で使っているカーボンファイバーは、航空業界や自動車業界で使っていたものをリサイクルして使用しています。
――日本やアメリカなど、国ごとに受け入れられやすいデザインの違いや変化はありますか?
ボイド氏:北米では液晶が分離するデタッチャブル(着脱式)が人気です。XPS 13のような液晶が360度回転するコンバーチブルも伸びてきています。薄型軽量化が図られたことにより、今後ますます伸びると考えています。
中国では最近、薄型軽量の製品が好まれます。数年前まで、このニーズはあまりありませんでしたが、最近は高まってきています。また、いまは画面のタッチ対応も求められていません。しかし、これも今後は変わってくると考えています。
――日本のユーザーにメッセージがあれば、いただけますか
ボイド氏:当社の最新の優れた製品を試して欲しいです。高品質で美しい仕上がりになっており、トータルのエクスペリエンスを提供します。日本市場にはゲーマーも多いので、Inspiron Gamingもきっと満足いただけると信じています。
――ありがとうございます