――じゃあ、何かを乗り越えてきたという感覚は。
ないです。ちっちゃな頃からガツガツした性格じゃなくて。ザッツひとりっ子というか。食べ物も取られたら、「まあいっか、買ってもらえば」と思うようなタイプの子で、そのまま大人になっちゃったというか(笑)。
――それがいい方向に働いていると。
偶然ね。自分に才能というものがあるとしたら、人とめぐり会う運は多めに持っているかもしれません。子どものころからの現場の方々とか、このドラマもそうですね。日本一周のドラマなんて相当過酷なので、ひとつでも綻びがあったりしたら凄惨な現場になっていたと思うんですけど、みんなに助けてもらえました。そういう人たちに会える運は持っているかもしれません。
――テレビや映画はもちろん、CMでも大活躍されています。インパクトの強すぎるイメージに困ったりすることはありませんか?
素直に喜んでます。小さな子どもがわざわざ声をかけてきてくれる。そういうのって最近までなかったことですし。ちょっとは認知されるようになったのかなと、素直に嬉しいです。
「強い男」と「未来」の理想像
――今回の吉本くんは、強い男になりたいと言って旅に出ました。濱田さんが考える強い男とは?
強い人ねぇ。僕から見たら吉本くんも十分強い気がします。僕はテントで日本一周したいなんて思えないし、でも、この人は実際にやったわけだし。それに自分に向き合った時点でだいぶ強い人だと思います。でもそのチグハグさがまたこの作品のおもしろいところというか。見ようによっては強い人なんだけど、やっていることが情けないというか、強く見えないという。また自分の強さに一切気づいていないというか。そこも楽しみ方のひとつかなと思います。
――濱田さん自身は、どんな強い人でありたいですか?
メンタル的に外部からの影響を受けない人も強いなと思いますし、それこそ、パッと見で格闘技の師範とかも、一切構えなくても強いみたいな。覇気が出てるというか。朝早起きできる人も僕にとっては強いと思いますし。朝に強い(笑)。でも結局、人に優しくすることは一番強くないとできないかなと思いますね。
――来年、30歳になりますが、どんな役者になっていきたいということは考えますか?
あまり考えないです。徒然なるままに。10歳の頃と今の僕を比べたら、これでも背も伸びましたし。ちゃんと老けてますし。結構、最近白髪が多く生えてきたりしていて。あんまり自分の映像って見ないんですけど、たまに見ると、あー、目尻とかシワっぽくなったなと。
――役者としてその変化が嬉しい?
楽しいですね。老けてきたぜ!っていう。キレッキレの二枚目でお仕事しているわけではないので、髪が薄くなったりなくなったりしても、持ち様によっては武器になるだろうし。だから変化を楽しみながらですね。
――最後に視聴者に向けてメッセージをお願いします。
吉本くんは、立川談志師匠が言うところの「落語とは業の肯定だ」みたいな、そういう、人って愚かだよねみたいなのがよく分かる人。でも僕なんかはそこが彼を好きになる要素のひとつで。そういう人間臭さは出すようにしました。ドラマ全体としては、間違いなく地上波では見れないというか。日本一周するスケールもそうですし、僕らが頑張って作り上げた内容も地上波向けではないです。ここでしか見れない作品です。楽しんでください。
■プロフィール
濱田岳
1988年6月28日生まれ、東京都出身。98年にドラマ『ひとりぼっちの君に』でデビュー。04年の『3年B組金八先生』の出演をきっかけに本格的に俳優の道にシフトした。06年に『青いうた~のど自慢 青春編~』で映画初主演、11年『ピースボート -Piece Vote-』で連続ドラマ初主演。ほか主な出演作に映画『アヒルと鴨のコインロッカー』、『永遠の0』『ヒメアノ~ル』『本能寺ホテル』、ドラマ『軍師官兵衛』『HERO』『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』などがある。現在NHK連続テレビ小説『わろてんか』に出演中。