強気派の国内個人投資家も
そして日本の個人投資家の投資意欲が、マイナス金利で弱気になっていたのに対して、「ここ半年、じわじわと強気派が増えている。インフレ期待もじわじわっと増加傾向が著しい」(同)という状況で、こうした投資家の感情も株価上昇の期待感に繋がっている。
また、政府の「新産業構造ビジョン」によって名目GDPが2020年には10%増の592兆円、2025年には30%増の703兆円になると予想されており、「(政府が)かなり本腰入っている感じがしているのも根拠の1つ」(同)だとしている。
リスク要因としては、同社が継続して確認しているクレジット・サイクルは「去年ピークを打った」(同)と見ており、金融システム全体の安定感が高まっているという。株価上昇がバブルかどうかの判断では、ビッグデータを使ったスイスETHの分析でもバブルではないとされており、問題がないとの判断だ。
「よく言われるリスク要因」(同)である債務の膨張は、特に新興国で名目GDPの伸びを超える債務残高の上昇があるが、今年の4月以降は落ち着いてきており、世界の大手銀行の資本力が過去最高になっており、その余裕を使えば約2,000兆円を投入できるとしている。
大槻氏が「一番気になる」という不動産バブルも、住宅価格が上昇しているものの家賃の上昇率と「相当程度相関している」(同)ことから、実態に合った不動産価格の上昇とする。
こうした点から、バブルというレベルにも達しておらず、大槻氏は「サイクル的な金融危機は発生しづらい」と結論づける。
11月8日に22,913円に達した日経平均株価は、一株当たりの純利益(EPS)で判断すると1,506円。証券会社のアナリストらの予想を集計したQuickコンセンサスでは1,539円であり、来期予想は1,658円とされている。今年度当初の予想では今期1,400円の予想だったため、現時点で7.5%の上方修正となっている。これが今年後半も継続した場合、来年5月の時点ではさらに7.5%の上昇によって日経予想では1,619円、Quickコンセンサス予想で1,654円になる、というのが予想だ。
同社のチーフ・ストラテジスト広木隆氏は、両者の予想の中間を取った1,637円が今期のEPSになるとした。2割増益という位置づけだが、各証券会社などの増益予想では14~15%増となっており、「驚くべき数字ではない」(広木氏)との判断だ。
来期のEPSについては、「コンサバティブに見て5~7.5%の増益」(同)としている。今期が20%増の予想のため、伸び率は下がり、「急ブレーキがかかるシナリオを描いている。十分保守的ではないか」と広木氏は言う。
さらに広木氏はPBR(株価純資産倍率)、BPS(一株当たり純資産)、株主資本の価値などの数字を用いて、「日本株の3万円は十分説明可能」と強調する。
2019年は鬼門に?
日経平均株価が3万円に達するのは「19年3月まで」であり、この達成に自信を示すが、「2019年は鬼門」(同)だ。2019年には統一地方選、参議院選挙が夏までにあり、10月には消費増税が予定されている。消費増税は選挙前の19年の早い段階で決定され、消費増税を決めてから選挙が行われるとみている。
これに対して2018年度中に景気浮揚のための政策が実施されると予想され、「18年度は日本経済にとって非常にいい年になる」(同)。逆に19年度は「波乱含みの年になる」というのが広木氏の予測だ。14年の消費増税の際も景気後退局面があり、19年の増税でも景気後退がある、そういう懸念が株価上昇を抑える原因にもなりうると広木氏は話す。
松本社長も消費増税に加えて人民元の下落を最大のリスクと見積もるが、「長期的に見て日本の時価総額が他国と同じように増える軌道に入るか、新しい枠組みに入ってきたのではないか」と強調。株主ガバナンスが日本でも実現し、株価の上昇が国民全体の利益になるというコンセンサスが国民全体で共有されるようになって、長期的には株価が上昇する、と分析する。こうした「質的な変化が大変重要ではないか」というのが松本社長の判断だ。