Qualcommが香港で開催した「2017 Qualcomm 4G/5G Summit」において、同社は5Gモデムを使った接続実験に成功したことを発表。さらに、5Gスマートフォンのリファレンスデザインも披露し、来たるべき5G時代への道筋を語った。Qualcomm TechnologiesのExcective Vice Presidentであり、Qualcomm CDMA Technologiesの社長であるCristiano Amon氏は、「PCで始まったデジタル経済はスマートフォン時代となって、今や75億のモバイル接続がある」と指摘し、今後さらなる拡大を遂げると指摘する。
2035年には、5G関連の経済効果は12兆ドルに達するとAmon氏は予測を紹介。2014年からの20年で、データトラフィックは30倍に伸び、2019年には5Gの標準技術である5G NRを利用したスマートフォンが、モバイルブロードバンドで利用されるようになる。「ラストワンマイルでは新技術が必要だ」とAmon氏は強調。
ユーザーは高速通信を必要とし、無制限のデータ通信を利用しようするが、それには新たな対応を業界全体で図る必要がある。それに対してQualcommが提供しようとしているのが、5G対応チップセット。投入されるのは、世界初の5G対応モデムである「Snapdragon X50」だ。
このX50を使ってQualcommは、ミリ波である28GHz帯でのデータ通信に成功。デモンストレーションの舞台は米サンディエゴで、複数の100MHz幅の周波数帯を用い、5G NRでのギガビットクラスのデータ通信を成功させた。「最初のマイルストーンだ」とAtom氏。
技術開発に合わせて、5G実現に向けては複数の段階を経ていくというのが業界の動向だ。まずは3GPPによる5G NRの標準化を進め、その後、互換性テストやトライアル、IoTを実施して、最終的に5G NR準拠の製品が登場する。このタイミングが2019年だ。
EricssonのHead of Networks Market Area South East AsiaのLuca Orsini氏によれば、2018年上半期までに技術的なトライアルを実施し、2019年上半期までに早期トライアル、そして下半期以降に5Gが正式に展開される。
このトライアルでは、2017年下半期にはNTTドコモ、チャイナモバイル、AT&T、Sprint、TELSTRA、Vodafone、SKテレコム、Ericsson、Nokia、ZTEの各社が参加。サブ6GHz帯とミリ波での互換性テストも実施される予定だ。
5Gの実現にはいくつかの困難もともなう。5GはLTE-Advancedも組み合わせることで広域のモバイルネットワークを構築。その技術のひとつとしてキャリアアグリゲーションがあり、複数の周波数帯を組み合わせて高速化を実現する。
LTE開始当初は、16の周波数帯しか使われていなかったのに対し、現在は49もの周波数帯が使われているが、異なるキャリアが異なる周波数帯を使うため、その組み合わせは1000にも達するという。これが5G時代になると、これまでよりも多くの周波数帯が利用され、IoTをはじめとしたさまざまな用途で活用される。そうした結果、周波数帯の組み合わせは1万にもなるという。
これがRFやアンテナなどの設計に大きなインパクトを与えるとAtom氏は述べる。設計にチャレンジするというのが、Qualcommの目標。そこで取り出すのが、5G NR対応のスマートフォンのリファレンスデザインだ。