それを象徴するように、9月の末にVAIOは新しいクラムシェル型ノートPCを投入している。
このVAIO S11/S13では、VAIOらしい高級感のあるデザインを維持しつつ、従来は11型の製品にのみ搭載されていた携帯電話回線を利用して通信できるモデムを搭載。いつでも、どこでもインターネットにつないでPCを使えることができることが最大の特徴だ。どこかで仕事しようと思った時に、Wi-Fiのあるお店を探して回ったりという必要が無いというのはわかりやすいメリットと言える。
吉田氏は「社内でも台数は追わないというフレーズを共有している。しかし、だからと言って数が出ないことの言い訳にはなってはいけない。堅実に台数は追い求めていく。やらないのは『無闇に台数を追い求めていく』ということだ」と述べ、新製品などの投入によって、B2Bの顧客ニーズを着実に刈り取る地道なやり方で台数を増やしていきたいと説明した。
一方でB2C市場も「B2Cの市場は諦めていない。まずは確実にB2Bの市場を固め、その上で魅力的な製品を投入していきたい」と吉田氏。まずはB2Bでしっかりと足下を固め、基盤の確立を果たせてから次の投資へと向かうということになるようだ。
事業規模は"倍"を目指せるか
事業展開では、海外における販路拡大についても吉田氏はさまざまな形で展開していくと説明した。
「現在は北米は自社で、南米ではライセンスでやっている。世界的にVAIOのブランド価値がまだ残っており、そこを消してしまうのはもったいないことだ。今回、中国に関してJD.comと組んで展開するのもその延長線上であり、JD.comだけで日本の市場に匹敵する規模がある。そうしたことを含めて投資フェーズだと考えている」(吉田氏)
吉田氏は今後のVAIOについて「この会社には潜在能力があると思っている、受託生産やソリューションビジネスなど新規事業ではまだ成長できる余地があり、チャンスがある」と話す。目標の明言こそを避けたが、現在の倍ぐらいにはできますかという筆者の問いには笑って否定しなかった。
そのためには、B2Bを強化してPC事業を筋肉質にし、その上で新規事業になる受託事業、そして今後新しいビジネスとして展開していくソリューション事業などを強化していく必要があるといえる。吉田氏がどのような舵取りをしていくのか、今後とも要注目だ。