富士通とレノボ・グループ、日本政策投資銀行は11月2日、PC事業における富士通とレノボとの戦略提携について正式契約を締結したと発表した。
今回の提携により、富士通の100%子会社として運営されている富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式のうち、51%をレノボに、5%を日本政策投資銀行にそれぞれ譲渡することで、FCCLを3社の合弁会社とし、PCおよび関連製品の研究開発・設計・製造・販売を行う。
FCCLの社名はそのまま継続して使用されるとともに、現在の製品ポートフォリオや開発、製造体制も維持し、引き続き富士通ブランドの製品を提供していくことになる。商品の販売やサポートは、法人向け商品が富士通から販売パートナー経由か直接提供し、サービスも富士通が提供する。国内個人向け商品については、FCCLから販売店経由、または直接提供し、サポートもFCCLが提供することになる。
エッジコンピューティングへの対応が一つの課題
富士通 代表取締役社長の田中 達也氏は今回の提携について、「富士通が30年以上にわたり培ってきた製品開発力と製造能力に加えて、レノボの持つ世界屈指の調達力、スケールメリットを活用することが目的」と話す。富士通ブランドPCの商品力強化によって、富士通グループにとっても有意義なものになるというわけだ。
一方でレノボ・グループ 会長 兼 CEOのヤンチン・ヤン氏は、「当社の中核事業はPC事業であり、今回の信頼できるブランドである富士通とのパートナーシップは、PC市場で世界第3位の規模を誇る日本はもちろん、グローバルでのビジネスをさらに強固なものにしてくれるでしょう」と述べ、今回の提携がレノボと富士通の双方に大きなメリットをもたらすだろうと、提携についての期待感を示した。
今回の提携では、PCのみならず、タブレットやシンクライアント、VRヘッドセットなど、関連製品の研究開発、設計、製造、販売までをカバーする。FCCLは独立した専任の組織として運営されるため、経営陣や販売ルート、現在行われている業務などに変更はなく、ユーザーにとっては「これまでと変わらない存在になる」(レノボ・グループ シニアバイスプレジデント 兼 アジアパシフィック地域プレジデント ケン・ウォン氏)という。
ウォン氏は、日本市場について、法人向けを中心に2020年まではPC市場の成長が見込めるとした上で、レノボと富士通それぞれの強みが補完しあい、より良いデバイスの提供やサービスを展開することで、さらなる成長を実現できるとアピールする。
現在のFCCLは「付加価値の進化」をキーワードに、PCやタブレットの既存製品に対して「モビリティ」や「セキュリティ」といった特定機能の強化を進めてきた。一方でFCCL 代表取締役社長の齋藤 邦彰氏は「分散型エッジコンピューティングなどへの対応が足りない」として、トレンドの追従、先取りを意識した商品・サービスの展開を模索すると話す。