KDDIに貢献できる体制が整ったBIGLOBEモバイル

一方のビッグローブは、元々NEC傘下の固定回線向けインターネットサービスプロバイダーであったが、2014年にファンドへの売却によって独立した後、今年1月にKDDIに買収され、傘下に入ったという経緯がある。それゆえビッグローブはインターネットサービスに強みを持っており、MVNOによるモバイル通信サービスも当初は、音声通話がないデータ通信のみのものを主軸に据えていたし、実店舗での購入は難しく、インターネットを介したSIM単体の販売が主体であった。

またUQコミュニケーションズのように、WiMAX 2+のネットワークを自ら敷設しているキャリアとしての顔は持っていないことから、特定のネットサービスを利用した時だけ通信量をカウントしない、いわゆる「カウントフリー」の取り組みにも比較的寛容だった。そうしたことから動画や音楽系のサービスが通信料無制限で使える「エンタメフリー・オプション」を提供するなど、柔軟性のあるサービスを実現できていたのだ。

ビッグローブはカウントフリーにも柔軟な姿勢を示しており、現在はエンタメフリー・オプションとSIMをセットで提供する「エンタメSIM」の販売に力を入れる

こうしたビッグローブの強みや特徴を生かし、なおかつUQ mobileとの相乗効果を生み出すためにも、BIGLOBEモバイルではSIM単体での販売を重視する戦略を取ったと考えられる。10月には従来提供していたNTTドコモの回線を用いたSIMだけでなく、auの回線を用いたSIMも提供するようになったことから、ようやくKDDI傘下の企業として、本格的に貢献できる体制が整ったといえよう。

とはいえ先にも触れた通り、KDDIは低価格通信サービスの市場で大きく出遅れている状況に変わりはない。MVNOの中での存在感こそ高まってきたとはいえ、低価格市場で圧倒的シェアを持つソフトバンクのワイモバイルブランドには、高い注目度を誇るUQ mobileをもってしても大きく水をあけられているのが現状だ。

それだけに今後は、販売を積極化し始めたBIGLOBEモバイルがどこまで人気を獲得し、他の2つのサービスを含めた、KDDIの傘下MVNO全体での契約数を大きく伸ばせるかが注目されることとなりそうだ。両社が好調に伸びてワイモバイルに対抗し得る勢力を作り上げられるか、あるいは伸び悩んで戦略の練り直しを迫られるのか。KDDIの低価格市場向け戦略からは、引き続き目が離せない。