上野ゆかりの東宝が復活
「PARCO_ya」の上には、地元民からのシネマコンプレックスへの期待に応え、「TOHOシネマズ 上野」を7~10階に展開する。もともと上野エリアでは、昭和29(1954)年~2003年までの48年間、「上野東宝劇場」と「上野宝塚劇場」が運営されていた歴史があり、今回の展開は"復活"ということになる。
全スクリーンにヴィヴ・オーディオスピーカーを採用し、優れた音響品質を提供。約1,400席で最大300席規模のスクリーンも備える。映画は洋画・邦画と幅広いジャンルを提供するが、中でも近隣の秋葉原を意識し、アニメファンから支持される上映ラインナップを予定している。
就労者を街に呼び込む
さらにその上の12~22階には、オフィスが広がっている。上野の街を眺望するオフィスはすでに埋まっており、近隣の企業も入居しているという。「上野駅という北の入り口にも近く、また、都心にもアクセスしやすい立地でありながら、都心3区(千代田区、中央区、港区)に比べて割安感が高いことで支持された」と、大丸松坂屋百貨店 不動産事業部の齋藤孝明マネージャーは言う。上野フロンティアタワーに賃貸オフィスを設けることで就労者を街に呼び込み、タワー以外の近隣施設にも賑わいを波及することを狙っている。
上野ファンの声を具現化したエリア
上野フロンティアタワーのオープンに合わせて、松坂屋上野店本館も新エリア開業のほか、従来エリアでも品揃えや装飾の刷新を図り、従来の顧客層である40~50代女性をメインターゲットにしつつ、パルコとのシナジー効果を高める取り組みを行っている。地下1階の食品フロア「ほっぺタウン」も、「金沢まいもん市場」や「肉卸小島」等という新店舗が拡充された。
まず、上野フロンティアタワーの地下1階は松坂屋上野店のフロアとなる。本館にあった婦人靴エリアを移設したほか、本館でも連動して展開する「上野が、すき。」を集約したエリア「上野が、好き。ステーション」が広がっている。この「上野が、すき。」は、上野好きが集まり、上野をもっと楽しむことを目指した無料のコミュニティサイトであり、現在そのメンバーは3万人を超えた。今回の新展開には、随所にメンバーの声も生かされているという。
上野フロンティアタワー地下1階の「上野が、すき。ステーション」には、上野の情報を発信する「上野案内所」を設置。また、上野エリアの老舗や名店の中からえりすぐりの商品をそろえており、知られざる上野に触れることができる。
本館2階には「上野が、すき。」メンバーからも要望が多かったという、美や健康をテーマにした14店舗がそろう「上野 HA・NA・RE」や、メンバーとつくる美と健康の新オアシスを目指した「上野が、好き。カフェコムサ」を展開する。
また、本館7階には「上野が、すき。ギャラリー」も設置。ギャラリーでは11月1~7日の期間、上野にキャンパスを構える東京藝術大学との共同企画「貴重映像でふり返る 松坂屋上野店の歩み」を展開している。昭和4(1929)年に現在の本館が完成した際、日本で初めてのエレベーターガールが誕生したのもこの松坂屋上野店だ。そうした歴史を、ここで振り返ってみるのも面白そうだ。
パルコは特区認定での大型プロジェクトでも中低層商業施設で展開する小規模なゼロゲート事業でもない、新業態「PARCO_ya」で新しい価値の創出を目指す。そして、大丸松坂屋百貨店は上野に根ざしながらも、4月20日にオープンした「GINZA SIX」等とともに複合施設として"脱百貨店"を目指す。パルコの牧山代表執行役社長は、「この上野での取り組みにより、J.フロント リテイリング入りしたパルコが開花する」と話すように、この場所から新しい上野が始まるとともに、新しい街のカタチも始まると言えるそうだ。