iPhone Xの画面サイズは、iPhone 8やiPhone 8 Plusなどの16:9の比率からすると、縦方向が伸びたことになる。2,436×1,125ピクセルは、短辺の9を固定するなら、19.48:9という比率である。

前述のセンサーハウジングと画面サイズや縦に伸びたディスプレイの影響を最も受けるのは、アプリだ。まず全画面を使うアプリについては、センサーハウジングの部分を避けなければならない。また、後述のホームボタンの代わりに利用する画面下部のフリック操作に、アプリの内容が干渉しなような工夫も必要だ。

筆者がレビュー用に試用していた時期は、まだApp StoreがiPhone X向けのアプリを受け付けていなかったことからアプリ側の対応が進んでいなかった。

Instagramではセンサーハウジング部分にロゴが一部かかってしまっていた。Facebookアプリでは、画面下部のタブアイコンとホームボタンの代わりとなるバーが表示されるエリアが干渉し、上手くアプリ内の機能を切り替えられなかった。また10月14日のAdobe MAXでお披露目となった新モバイルアプリAdobe Lightroom CCも、iPhone Xではフィルタや共有ボタンがセンサーハウジングにかかって押せない状態になっていた。

なお、InstagramやFacebookはアップデート版が用意され、画面の上下部分の干渉が改善された。iPhone Xリリース前後に合わせて、こうしたアプリの微調整が続いていくと予想されよう

ただし、アプリ開発者が気にすべきは、それだけではない。

iPhone Xはホームボタンが廃止された代わりに、画面下部のジェスチャーを用いる。操作可能であることを示すバーがアプリ起動中は常時表示され、アプリはこのバー周辺の領域を避けなければならない

iPhone Xではデバイスの隅々までディスプレイが敷き詰められ、端から端までをアプリが利用することができる。その上で、画面下縁のジェスチャーによってホームボタンの代わりの操作を実現するため、デバイスの下寄りを握ることになり、画面上部の片手での操作は難しくなる。

iPhone Xへの最適化は、センサーハウジングや画面下部のエリアを避けるだけでなく、抜本的なユーザーインターフェイスの検討が求められることになる。 (続く)

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura