Appleは10月27日に予約を開始したiPhone Xを、11月3日に発売する。9月12日のスペシャルイベントで、未来のiPhoneを示唆するモデルとして発表されたiPhone Xが、2カ月近くのタイムラグを経て、いよいよユーザーの手に渡り始める。

Super Retinaディスプレイを搭載するiPhone X。5.8インチはiPhone史上最大のディスプレイサイズとなる

iPhone Xを1週間試してみての、その最新の機能について、3回に分けてレビューをお届けしたい。まずはじめは、ディスプレイを核とした新しいデザインとインターフェイスについて掘り下げていくことにする。

iPhone Xシルバー。iPhone 8のシルバーとは微妙に異なる色味の背面を持つ

iPhone X最大の進化のポイントは、これまで採用されてきた液晶ディスプレイRetina HDディスプレイが、有機ELを搭載するSuper Retinaディスプレイに変更されたところだ。「Super」という名称には安易な印象もあるが、実際に触れて見ると、納得がいく。

有機ELディスプレイは一般的に、その発色の良さ、薄型化、省電力性、そして高コントラストを実現する。Super Retinaディスプレイは458ppiとこれまでのiPhoneで最も細かいドットピッチを実現しており、コントラスト比は100万:1。これまで、液晶ではどうしても漏れてしまうバックライトの光がコントラスト比を下げていたという経緯がある。

夜の屋外や暗い室内、飛行機の中で見れば、液晶と有機ELの「黒」の違いは明らかだ。黒い壁紙を用意して最大輝度にしたiPhone XとiPhone 8 Plusを並べてみると、iPhone 8 Plusでは強いバックライトの光によってダークグレーのような色になるが、iPhone Xではブラックホールのように黒いままで、黒以外の色の領域のみが点灯していることがわかる。

Googleマップは夜間、暗いトーンで地図と経路表示が行われるが、Super Retinaディスプレイは、こうした表示でも威力を発揮する

iPhone Xで撮影したコーヒーのモノクロ写真。iPhone Xで表示させると、コーヒーの部分がブラックホールのように黒く豊かな表現となる

左から、iPhone 8 PlusとiPhone Xを暗所で、最大輝度に設定して撮影した。デジタルカメラの写真を通じても、黒の部分の深さの違いが分かる。その一方で、色の部分はこれまでのRetina HDディスプレイも十分鮮やかに再現できていることが分かる

こうした有機ELディスプレイの特性はそのままに、Appleは極力、これまでのRetina HDディスプレイと同じように、自然な色味や、紙のように文字を読む体験を再現しようとしている。広色域のP3サポートや、環境光に応じたホワイトバランスの調整を行うTrueToneも採用された。しかも環境光の色センサーは4つから6つに増加している。

有機ELは黒が消灯であることから、黒い画面の方がバッテリー持続時間に寄与する。それでも、黒い背景と白い文字で表示が「一般的な読書体験とは異なる」との理由から、白い背景にしてもバッテリー持続時間をきちんと維持できるよう調整しているという。できるだけ自然に、と心がけつつも、これまでのiPhoneとは比べ物にならない発色の豊かさ、濃淡の幅の広さを実現し、カラー写真はより鮮やかな再現を、モノクロ写真はより深みのある黒を起点とした階調を実現している。

画面サイズ、ドットの細かさ、色再現、豊かな階調。これらの要素が、「Super Retinaディスプレイ」と呼ばれる理由と言えるだろう。