セイコーエプソンの大容量インクタンクプリンタの販売が好調だ。同社は、2017年10月26日に発表した2017年度上期(2017年4月~9月)の連結業績発表にあわせ、大容量インクタンクプリンタの販売計画を上方修正してみせた。

今年度の新たな計画値は、780万台以上。7月に行われた第1四半期業績発表の席上でも、年初計画の730万台を740万台に上昇修正していたが、それをさらに引き上げた格好だ。前年比でいえば、30%増という大幅な成長を見込み、同社が全世界で出荷するプリンタの45%以上を大容量インクタンクプリンタが占めることになる。

セイコーエプソン 代表取締役社長の碓井 稔氏は、「大容量インクタンクプリンタは、当社の成長ドライバーである」と位置づけており、2018年度以降は、半数以上を大容量インクタンクプリンタが占める可能性も出てきた。

新興国から先進国まで、大容量インクプリンタの裾野広がる

セイコーエプソン 代表取締役社長 碓井 稔氏

大容量インクタンクプリンタが好調な背景には、いくつかの理由がある。ひとつは、主力となる新興国での販売が好調なことだ。

碓井氏は、「いよいよ競合が市場に参入してきたが、品質などの差があり、当社の販売は好調。当初想定していた競合の脅威はない。そして、新興国において、大容量インクタンクプリンタ市場そのものが拡大傾向にある」と、差別化戦略が成功している点と、市場成長に自信をみせる。中でも、南米やアジア、インドなどの市場で成長が著しいという。

大量にプリントをする企業において、大容量インクタンクならではのコストパフォーマンスの高さや、インクカートリッジの交換がなくなること、それに伴ったインクカートリッジの在庫確保が必要ない利便性に加え、純正インクの利用による印刷品質の維持、独自のマイクロピエゾヘッドによる耐久性の高さなどが評価されている。

2つめは、先進国市場においても、着実に販売数量を増加させてきたことだ。

「先進国においても、市場認知度の高まりから販売数量が増加し、着実に大容量インクタンクプリンタの販売比率が高まっている。先進国で受け入れられるように、デザイン面も抜本的に見直し、インクのチューニングも遜色がない形にした。11月からは、さらに大容量インクタンクプリンタの販売を本格化する。日本でも柱のひとつになるような拡販体制を取りたい」(碓井氏)

また、同社 取締役執行役員 経営管理本部長の瀬木 達朗氏も、「オフィスや店舗での使用に適したモデルに加えて、日本では、家庭にも適したモデルを充実させることで、先進国でも順調な拡大を遂げている」と言及する。今回の会見では、先進国でも「柱」に位置づける姿勢を、初めて明確に示してみせたといえる。

プリンタ好調も、増収減益

セイコーエプソン 取締役執行役員 経営管理本部長 瀬木 達朗氏

さらに、先進国を含む需要の高まりに対しても、生産体制を強化、万全な体制を構築しつつあるという。

実は第1四半期、インドネシアの工場が火災となり、部品の調達に遅れが生じて減産を余儀なくされている。だが、第2四半期には急きょ増産体制を敷いて、これをリカバリーした。さらに、インドネシアの工場に加えて、第2四半期にはフィリピンの新工場も稼働。ここでは省人化とともに、大型プリンタの生産にも最適化しているという。

セイコーエプソンが発表した2017年度上期業績は、売上高が前年同期比8.2%増の5273億円、営業利益が14.7%減の536億円、税引前利益が15.0%減の151億円、当期純利益が18.7%減の149億円の増収減益。そのうち、プリンティングソリューションは、前年同期比7.4%増の3420億円、事業利益は5.9%増の359億円となっている。

ただ、第2四半期では、プリンティングソリューションズの事業利益は前年同期比34%減となっており、火災の影響が生産、販売に及んだこと、インクカートリッジ型プリンタの出荷数量の変動による費用計上の増加などが減益に影響している。「第2四半期に増産を行ったことで、残業代や雇用に伴う労務費用の増加、さらには空輸によるコスト増がマイナスに影響している」(瀬木氏)と説明する。

また主要市場の日本では、個人向けプリンタ市場が縮小傾向にあるというマイナス面も見逃せない。