ライブ前編のトリを飾ったのは、2018年に充電期間へ突入すると発表されているスフィアだ。ピアノ伴奏と4声コーラスのみで「My Only Place」(TVアニメ『装神少女まとい』エンディングテーマ)を1フレーズ歌い、「Super Noisy Nova」(TVアニメ『宙のまにまに』エンディングテーマ)へとメドレーを披露すると、会場は大歓声で応える。活動歴の長さゆえに、多くのヒット作品や数々のイベントを通し、4人それぞれの人となりやヒット曲を知っているファンは数多く、近年の楽曲ではなかったこの日の選曲でも会場を熱くしていった。

スフィア

この3日間で発売されていたアニサマ公式パンフレット内で「カード」にちなんだギャグコメントを残していたスフィアだが、この日のMCでも似たネタで会場を盛り上げようとする役者ぶり。1980年代から様々な演者が担い、育んできたアイドル声優というポジション、2000年代においてそのイメージを大きく刷新してきた功績を持つ実力と、大舞台をもろともしない強かさを遺憾なく見せつけた。

後編に入ると、鈴村健一と羽多野渉が熱唱した「英雄」(TVドラマ『ウルトラマンネクサス』オープニングテーマ)やMinorin Mimorin(茅原実里×三森すずこ)による「Don't say "lazy"」(TVアニメ『けいおん!』エンディングテーマ)、アイリスフィア(スフィア×i☆Ris)の「おジャ魔女カーニバル!!」(TVアニメ『おジャ魔女どれみ』オープニングテーマ)、そして氷川きよしが登場。サプライズに次ぐサプライズが詰め込まれ、一呼吸も置けない流れが続く。

氷川きよし

アイドルマスター ミリオンスターズ

氷川が登場した時点で、出演者は残り2組に絞られた。華やかなオープニング映像が流れ、壇上に現れたのはアイドルマスター ミリオンスターズだ。およそ30分のパフォーマンスで、彼女らが披露した楽曲はメドレーも含めてなんと10曲。ソロシンガーや声優グループなど多岐に亘る活動を展開しているメンバーが多いこともあり、キレのあるパフォーマンスを見せてくれた。今回は、アニメ化への期待が高まっている中でのパフォーマンス。そんな背景から、数多くのファンが声援を送った。

そして2日目のトリを務めたのは、fripSideだ。「black bullet」(TVアニメ『ブラック・ブレット』オープニングテーマ)や「clockwork planet」(TVアニメ『クロックワーク・プラネット』オープニングテーマ)を披露した後のMCで、南條愛乃が「今年でfripSideは活動15周年、私がボーカルを務めるようになってからは8年経ちました。最初は色んなことが初めての経験で、怖さや恐れを感じたこともありました」と本音を吐露すると、会場からは温かい拍手が送られる。

fripSide

「初めてアニサマに出た時に歌った曲をやりたいんだけど、みんなで曲名を言おうか」との語りかけに、大歓声で応じる会場。「せーの!」の掛け声に合わせ、観客は2009年に発表され大ヒットした「only my railgun」(TVアニメ『とある科学の超電磁砲』オープニングテーマ)を一斉にコール。皆、納得したであろうこの1曲で2日目を締めた。

2005年から始まったアニサマは、東京・日本武道館からさいたまスーパーアリーナへと場所を移して13年目を迎えた。その間も活況が続くアニソンシーンにおける大舞台であり、台風の目であり続けた。公式サイトで発表されているセットリストや出演者たちを今一度見てみると、この10年間で生まれたヒットソングとブレイクしたキャストをここまで揃えることができたのは、かなり久々だったように思える。

テーマソング「Playing The World」のパフォーマンスを披露する2日目出演アーティストたち

これまでヒットソングに恵まれてきた実力者たちだけでなく、若い世代の声優やシンガーが台頭してきたことで、アニソンシーンにも新陳代謝が起こってきていることがハッキリとわかってきた。「もしかすれば今年は、今後のアニソンシーンの分岐点だったのではないだろうか?」と思わせてくれる、充実した意義深い3日間だった。

(C)Animelo Summer Live 2017/MAGES.

■プロフィール
草野虹
福島県いわき市生まれ。COOKIE SCENE、Belong Media、MEETIA、音楽だいすきクラブなど様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。幼いころから身近に同人作家兼同人コスプレイヤーの女性がいたことにより、日本のMAGカルチャーにドップリと浸かっており、現在も知り合いには音楽やアニメ好きが多い。水泳や野球などのスポーツを部活動やサークルを通じて経験してきたこともあり、体育会系音楽オタクとして日々過ごしているアニメも大好きな男。