さて、今回のアップアップデートの目玉、Apple Musicの対応へと話題を移そう。これまでApple Watch単体で通信環境がない場所でも音楽を聴くことはできた。iPhoneに格納してあるプレイリストをひとつだけ転送することが可能だったのである。しかし、これでは、明日聴きたい曲を変えるのに、充電ドックに乗せ、プレイリストを変更して同期させなければならなかった。転送時間はそれなりにかかり、すぐにというわけにはいかない。結果、寝る前に充電しつつ同期するというのを強いられることになっていた。

だが、Apple Musicなら好きなときに好きな曲が聴ける。

iPhoneの「ライブラリ」に格納されている楽曲のほか、Apple Musicで配信されている4,000万曲以上が聴けるようになる

Apple Musicだけで4,000万曲以上が聴け、iCloudミュージックライブラリとの併用でリッピングした曲、iTunes Storeで販売されているがApple Musicで配信されていない曲も聴ける。つまりApple Watchから聴けない音源は実質なくなると言って良い。これは先頃販売が終了したiPod nano、iPod shuffleの代役を立派に務めるどころか、それらを越える存在になり得る。iPodはそのコンパクトさ、扱いやすさが魅力の製品だったが、記憶媒体の容量には限りがあった。ストリーミング再生が可能なApple Musicでは、通信量はともかく、保存の空き容量を気にする必要はない。

もちろん、曲をApple Watchに転送する機能も引き続き利用可能である。自分で作ったものでも、Apple Musicで用意されているものでも、iPhoneの「Apple Watch」アプリから プレイリストを「複数」同期できるのだ。さらに、よく聴いている曲、「フェイバリット・ミックス」「チル・ミックス」「ニュー・ミュージック・ミックス」は自動で同期される。なので、オフラインでもApple Watchで音楽を聴ける。watchOS 4.1でApple Watchは最強のiPodとなるのだ。

新アプリ「Radio」アプリではBeats 1をはじめ、Apple Musicのステーションを聴ける

新アプリ「Radio」ではBeats 1をはじめ、Apple Musicのキュレーションされたステーションをライブやオンデマンドで楽しめる。「Beats 1」では、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンの3カ所に、このインターネットラジオサービスのために作られたスタジオから24時間番組が配信されている。Apple Musicのメンバーシップを取得している場合Beats 1は広告がなく、「J-ロック」「トゥデイズJ-Pop」などのApple Musicのラジオステーションが聴けるようになる。Beats 1はBBCのラジオ局「Radio 1」の人気DJ、ゼイン・ロウらの喋りが入るが、それ以外の番組では好みでない曲が流れた場合、スキップできる。Apple Musicのラジオステーションは、Apple Musicのキュレーターがその時オススメの楽曲をずっと聴き続けられるように纏めた、延々と続くのプレイリストのようなものだ。メンバーシップ取得は有料だが、新規の加入者はお試しで3カ月間無料での利用が可能となっている。

Apple WatchでApple Musicを聴けるようになったはいいが、最初戸惑ったのは、ここから曲を探せないのかな?ということだった。Apple Watchの「ミュージック」アプリを開くと「プレイリスト」「アーティスト」「アルバム」「曲」と、所謂、「ライブラリ」に追加されている曲は見つかるけど、ない曲は、一見探せないように思える。

一見「ライブラリ」にない曲は探せないように思えるのだが……

そこで、Siriの登場だ。

曲を探すのは完全にSiriにお任せ。Siriはさらに賢くなっていて、バンド名を所謂「4字略語」で省略しても理解してくれる。かつて、みうらじゅん氏が唱えた「エリクラ現象」「バドカン現象」に対応するというのだ。聞いた話では「ドリカム」「ミスチル」でちゃんと曲をかけてくれるとのことだが、ちょっと大人向けのバンドだなあと思ったので、最近の人たちの名前でお願いしてみた。すると、SEKAI NO OWARIとか、BLUE ENCOUNTはそれぞれ「セカオワ」「ブルエン」でかかった。さらに「マンウィズ」と言ってお願いしたところ、なんと「MAN WITH A MISSION」に変換して表示した上、曲を見つけてくれた。「ロキノン」とか「クロスビ」あたりの読者が食いつきそうなバンドでもいけそうなのでいろいろ試してみて欲しい。ちなみに、肝心の「エリクラ現象」「バドカン現象」に対応しているかどうか確認したところ、エリック・クラプトンはOKだったがバッド・カンパニーはダメだった。

「マンウィズ」をかけてとお願いすると、なんと「MAN WITH A MISSION」に変換して表示した

ピンポイントでの再生にもSiriは応えてくれて、誰々の何々という曲かけてとお願いすると、邦楽の日本語タイトル曲なら、かなりの確率でいける。洋楽だとちょっと厳しいようで、邦楽でも欧文のタイトルがついてるとダメみたいだ。洋楽をピンポイントでということなら例えば、「ジェフ・ミルズの"The Bells"をかけて」で、使用言語を英語に、「ファナ・モリーナの"Tres Cosas"をかけて」で、使用言語をスペイン語に変更すれば良い(もちろん、それぞれ英語/スペイン語で話しかけなければならないが)。

邦楽の日本語タイトル曲なら、かなりの確率でリクエストに応えてくれる

ただし、欧文のタイトルがついてると厳しい。YMOの"CUE"をかけてとお願いすると「丘(きゅう)」と理解し、ライブラリにある、タイトルに「丘」のついた曲、「月の丘」/Darieをかけてしまった

抽象的なリクエストでも大丈夫で、「私の好きな音楽をかけて」「テンションの上がる曲が聴きたい」「ダンサブルな曲をかけて」などと言うと、それっぽい曲がかかる。