『宇宙刑事ギャバン』から『宇宙刑事シャリバン』への作品の引き継ぎは、実にスムーズかつドラマチックに行われた。『ギャバン』のクライマックス三部作(第42~44話)の序盤にあたる第42話において、行方不明の父ボイサー(演:千葉真一)を捜しに剣山へやってきた一条寺烈を待ち受けたのは、野獣のような身体能力を持つ若者・伊賀電だった。

森林パトロール隊員であり、森の動物や植物を愛する電は、烈を密猟者と勘違いして襲撃してしまったのだ。誤解が解けて意気投合したのもつかの間、電はマクーのバファローダブラーに襲われて瀕死の重傷を負う。電を死なせなくないと思った烈は、彼を銀河連邦警察本部のあるバード星に連れて行き、その優れた医療技術で命を救おうと考えた。さらに第44話(最終回)では、マクーを滅ぼした功績を認められ、銀河パトロール隊の隊長に昇進したギャバンの後任として、地球担当の宇宙刑事となった伊賀電=シャリバンがさっそうと登場。『シャリバン』の第1話「幻夢」へと物語が引き継がれていく。

ところで、ギャバンこと一条寺烈は銀河連邦警察の宇宙刑事になるために、子ども時代から何年もバード星で訓練を続けているという設定だった。さらには『シャリバン』の次回作『宇宙刑事シャイダー』(1984年)でも、主人公・沢村大(演:円谷浩)が宇宙刑事として独り立ちするまでに、最低でも2年以上の歳月が必要だと語られている。それに比べて伊賀電の場合、重傷を負ってバード星に運び込まれてから、一人前の宇宙刑事として地球に着任するまでの期間がいくらなんでも短すぎるのではないか、と思われる向きも少なくないかもしれない。これについては劇中の描写をヒントにして、次のような解釈を行うことができる。

本来ならば手順どおりに宇宙刑事になる訓練を何年間も行わなければならないところだが、森林パトロール隊員としてギャバンも驚くほどの優れた身体能力を備えた電の資質を見込んだコム長官が、特例として彼を「飛び級」のような形で宇宙刑事に任命。急遽コンバットスーツとコードネーム「シャリバン」を与えられた電は、命の恩人である烈との引き継ぎを果たした後、あらためてバード星にて本格的な訓練を行った(第1話で、電がシャリンガータンクの操縦訓練を行う回想シーンがある)。そして、晴れて地球担当刑事となった電=シャリバンはパートナーのリリィを伴い、新たな宇宙犯罪組織マドーと戦うべく行動を開始した……。実際のところ、これらの設定に関しては劇中ではっきりと明かされていないため、これらの謎についてはファンの方々がそれぞれ自由に想像をめぐらせて分析や解釈を試みてほしいところだ。

『宇宙刑事シャリバン』は、前作『ギャバン』で好評だった「未来的メカニックを操るコンバットスーツ(強化服)ヒーロー」という要素をそのまま受け継ぎつつ、敵設定にいっそうの「怪奇・幻想」風味を加え、番組としてのパワーアップに務めている。『スパイダーマン』(1978年)『電子戦隊デンジマン』(1980年)『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)でもスピーディなアクション演出や幻想的な画面作りで話題となった小林義明監督による第1話「幻夢」第2話「魔界ニュータウン」では、大ヒットホラー映画『ポルターガイスト』を彷彿とさせるパニック描写や、まさに夢か幻かというようなシュールなキャラクター配置(荒野の真ん中で、お面を被った子どもたちが童謡に乗せて踊り回る)など、序盤から絶好調の冴えを見せ『シャリバン』の独自性を築き上げた。

銀色に輝くコンバットスーツが子どもたちに強いインパクトを与えた『ギャバン』の次ということで、シャリバンには灼熱の太陽エネルギーをイメージした「赤」がヒーローカラーに採用された。設定では、超次元戦闘母艦グランドバースのソーラーシステムによって太陽エネルギーを増幅して赤いソーラーメタルに転換し、わずか1ミリ秒(0.001秒)でシャリバンに「赤射蒸着」されることになっている。

赤は情熱の色、燃える熱血の色であり、超能力を悪用して地球の人々を悪魔に染めていくマドーに激しい怒りを燃やす伊賀電のキャラクターと見事に合致。そのストレートなヒーロー性、そして人間の思いやりとは何か、本当の強さとは何か、愛とは何かを訴えるメッセージ性の強いドラマの数々は、従来の視聴ターゲットである子どもたちだけでなく、ハイブロウな作風を好む年長のアニメファンからの支持をも集め、本来なら現役の特撮ヒーローをことさら大きく取り扱わなかったようなアニメ雑誌(『アニメック』『コミックボックスJr.』など)が「いま宇宙刑事が面白い」と特集を組み『シャリバン』および『ギャバン』に熱い視線を注ぐようになっていった。

ここからは『宇宙刑事シャリバン』のBlu-ray BOX化を記念し、主人公のシャリバン=伊賀電を演じた渡洋史と、シャリバンのパートナーとして共にマドーと戦った女宇宙刑事リリィを演じた降矢由美子が、当時の思い出や苦労話を振り返ったマスコミ会見の模様をお届けしよう。