よくできているが懸念点も多い

ハードウェア的にもソフトウェア的にもよくできているXperia Hello!。未来感あふれるSF的デバイスとしては百点満点をあげてもいいだろう。とはいえ、意地の悪い目で見れば気になる点も多い。

まずHelloの中身は「SIMの刺さっていないAndroidスマートフォン+ロボットボディ」といった構成だ。会場にあった試作機はOSにAndroid 7を採用しており、音声アシスタント部分はその上で動作するアプリとして提供されているという。試作機でもお腹のディスプレイを操作するときにAndroid OSがしばしば姿を現すのを確認できた。ちなみにOSは「素」のAndroidだそうで、Helloのアシスタントを終了させてしまえば、Google Assistantも別途動かすことは可能だとのこと。その場合、Hello自体はピクリとも動かなくなってしまうという。さすがに製品版ではAndroidという「土台」を可能な限り隠してくると思われるが、万が一このまま市場に出回ることになれば、慣れない人にはパニックを起こさせてしまいそうだ。

個人的に気になったのが、スマートホームとの連携がほとんど明かされなかったこと。上述のとおり中身はAndroidであり、技術的にGoogleが提唱するスマートホーム技術などを採用するのは簡単だろうし、ソニーなら例えば「BRAVIA」シリーズのAV製品群に「ブラビアリンク」などの接続機能が提供されている。Helloに「21時からのテレビ番組をリビングのテレビで録画して」といった命令ができないのは、家電メーカーとしては手抜かりではないだろうか。単純に「テレビつけて」「チャンネル変えて」でもいい。技術的に対応するのは難しいことではないだろうし、あとからアップデートすることも可能だろうが、できれば最初から盛り込んでおいてほしい。

また、できることは多いとはいえ、何か楽しめるコンテンツがないと、飽きが来てしまいそうな不安がある。スマートスピーカーには定額音楽配信サービスとの連携が付き物なのに、Helloにはそれがない。本体内蔵のスピーカーがそもそも音楽向けのものではないので仕方がないだろうが、ソニーにはmoraという配信サービスもある (定額配信には未対応)。何らかの形でのコンテンツ連携も今後の課題だろう。

価格設定にも疑問だ。約15万円というのは、スマートロボットとして考えても、さすがに高すぎる。AIBOですら廉価モデルは10万円を切っていたのだ。例えばスマートフォン的な部分(演算処理とディスプレイ)は手持ちのスマートフォンを使うことにして、ボディとソフトウェアだけを59,800円くらいで売っていれば、買ってみようかなと思う人も結構出てこないだろうか。ブランド価値ということを考えても、現在の価格はあまりに強気すぎる。実は売りたくないのではないかと思ってしまうほどだ。

参考出展ながら着ぐるみタイプのカスタマイズも展示されていた。個人的には外装の色違いなどが欲しいところだ

最後にメンテナンス関連。ロボットは感情移入しやすく、まして話しかけてくれるHelloは、家族の一員として親しまれることが予想される。すると何らかの原因で故障した場合、いつまで修理などのフォローが行われるかが気がかりだ。AIBOでは公式サポート終了後も元ソニー社員の有志による修理が行われていたり、寺で供養が行われていたりする。Helloは回転軸に重心を集中させ、可動部も極力減らすことで修理自体の必要性を減らしているという説明だったが、修理交換や新型が出たときの機種変更時に、これまで学習蓄積してきた「個性」の移植をどうするかが気にかかる。これは今後Helloにかかわらず、多くのAIアシスタント搭載製品で問題になると思うので、はやく一定の解決策を提示してほしいものだ。

ちょっと粗探しのようになってしまったが、Xperia Hello!自体は大変興味深く、今後の展開に期待が持てる製品だ。あとは一時の売れ行きに左右されず、長期にわたって愛され続ける製品に育ってくれることを祈りたい。