日産傘下入り後の三菱自による再建の方向は、同社の培った東南アジアでの強みをいかす戦略と、「i-MiEV」、軽自動車EV、SUV「アウトランダー」のPHVをベースとする電動車シフトの加速が主力となる。

「アウトランダーPHEV」

一時は世界に類を見ない総合自動車メーカーだった三菱

一方で、リコール隠しから燃費不正問題にまで及んだ、コンプライアンスが抜けた企業体質がどこから来たのか。この問題を見つめ直すことも重要だろう。三菱重工業からの分離独立が1970年。軽自動車から幅広い乗用車、軽トラから大型トラックまで抱えた、世界に類を見ない総合自動車メーカーとして、1990年代半ばまでには三菱グループも一目置く存在にまで成長したのが三菱自だ。一時は、親会社の三菱重工の業績を抜き、ホンダとの買収・合併話が浮上したり、「日産の背中が見えた」と豪語する社長も出たりした経緯を筆者は見てきた。

ルノー・日産連合という国際アライアンスに三菱自が加わったことで、3社連合を率いるゴーン氏による世界覇権も夢ではなくなった。今回の三菱自の中計でも、東南アジア市場とPHVという三菱自の強みについては、ゴーン氏も日産には無いものとして期待を寄せていることだろう。

三菱自はアセアンに強い

アライアンスの屋台骨が揺らぐ中で

だが、皮肉にも3社連合の中核である日産で無資格検査問題が発覚し、コンプライアンスを問われる問題が尾を引きそうな状況となった。この問題については、ある意味でゴーン長期政権の歪みの現れではと指摘する声も上がっている。三菱自の益子CEOは、「今回の件でアライアンスに影響はない」と言うが、三菱自の社内ではダイムラー主導経営の過去もあって、日産主導による改革を進める中で、当の日産が不祥事を起こしたことについて様々な思いがあるだろう。

いずれにしても、日産傘下で再建に向かう三菱自にとって、過去の不祥事での経験をいかし、「自律」した企業として成長していく流れを示せるか、三菱自なりの信頼回復への道を進めるこの3カ年中計は、何よりも重要なのだ。