Appleは2010年のiPhone 4から、自社開発のプロセッサを採用した。当時はA4と呼ばれるプロセッサだったが、そこから2年がたった2012年、iPhone 5sに採用したA7で、64ビット化を果たし、それ以来AppleはAシリーズのプロセッサの処理性能を「デスクトップクラス」と表現するようになった。

その当時、Qualcommのマーケティング最高責任者Anand Chandrasekher氏は「マーケティング上のまやかしだ」と断じている。64ビット化のメリットはメモリアドレス空間の拡大が挙げられるが、メモリ1GBしか搭載しないA7では意味がないと考えたからだ。

しかしARMは64ビット化に合わせて命令セットを刷新しており、当時デュアルコアだったA7でも、32ビットプロセッサと比較して大幅なパフォーマンス向上というメリットを先行して得られた。結果的に、Appleはスマートフォン向けのプロセッサの64ビット化で他社より3年分のアドバンテージを獲得したことになる。

Apple Watch Series 3には、W2チップが採用され、Wi-Fiで85%の高速化と、50%以上の省電力性を実現している

Appleは毎年発表するiPhoneに対して、自社開発のプロセッサを採用し、その処理性能を高めてきた。同時に、よりパフォーマンスを高めた派生バージョンをiPad Proに搭載し、また1~3世代前のプロセッサをその他の製品に採用している。2017年に発表された64ビットプロセッサであるA11 BionicはiPhone 8シリーズとiPhone Xに搭載されるが、2016年発表のA10 Fusionの派生モデルでA11 Bionic並の性能を発揮するA10X Fusionは、2017年モデルのiPad ProシリーズとApple TV 4Kに搭載されている。また2015年のiPhone 6sシリーズに採用されたA9は現在もiPhone SEやiPad(第5世代)に流用されており、2014年のiPhone 6に採用されたA8は、iPod touch(第6世代)や、12月発売のホームスピーカー、HomePodに内蔵される。