筆者が考えるiPad Proの絶対的な地位向上の方策は、iPhone XよりもiPad Proに、最新のプロセッサや技術などをつぎ込んでいくことだ。

現在iPhone 8やiPhone XにはA11 Bionicが搭載されているが、iPad ProにはA10X Fusionが搭載されたままだ。処理性能こそ後者が優れた部分もあるが、iPadが1世代古いプロセッサのままという状態は印象がよくない。

また、iPhone Xに採用されたTrue Depthカメラと顔面認証、セルフィーポートレート、Animojiといった機能も、iPad Proにも搭載されてしかるべきだ。ただ、それば正解なのかどうかは、別の問題なのかかもしれないが。

iPadも息を吹き返しつつあるが、現状、iPhoneほどの影響力を持っているわけではない。Appleの売上の60~70%をiPhoneが占めるが故に、iPhoneに対しては最大限に投資をしなければならない。そのため、最新のハードウェアや技術が投入される対象がiPhoneに偏ることは、どう考えても避けられない。

ただ、iPadのイメージを変える、タブレットという存在の概念を変えるための施策は、やはり早めに取り組んでおいた方が、Appleが狙う6億台の買い替え需要をより多く獲得する上では必要なことといえる。

iPhoneとのバランスを取りながら、iPadのイメージを変える、そんな舵取りをどのように実現していくのか、非常に注目している。Appleが得意としているハードウェアとソフトウェアの深い連携に加え、エンジニアリグとマーケティングを含めた大きな戦略を、実行すべきタイミングにさしかかっているのではないだろうか。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura