現在米国ではAmazon Echo、およびそのAIアシスタントであるAlexaが大きなシェアを確保しているが、Alexaは(今年中に日本に導入予定ではあるが)今の所、対応言語が英語とドイツ語などに限られている。

一方、スマートスピーカー市場では出遅れたグーグルだが、スマートフォンOSでは世界中に大きなシェアを確保しており、音声アシスタントであるGoogleアシスタントも英語、フランス語、ドイツ語、ヒンディー語、インドネシア語、日本語、ポルトガル語、スペイン語と、多言語対応が進んでいる。中国でも中国語に対応した独自のAIアシスタントを搭載したスマートスピーカーを各社が開発・販売しているようだ。

ここでようやくClovaに話が戻るが、Clovaは日本語と韓国語の認識を中心に開発されているAIアシスタントだ(韓国語版は「NAVER Clova」)。現時点で、この2言語両方に対応しているAIアシスタントはほかに存在しない(Googleアシスタントが対応予定)。またLINEのシェアを考慮するなら、タイ語とインドネシア語、中国語(台湾)への対応も不可欠だろうが、グーグルがインドネシア語で先行するものの、Alexaには先行できる見込みが高い。

従って、Clovaとしては日本市場や韓国市場を中心にしっかり足場を固め、LINEの影響力が高いアジア圏の中で確固たる地位を築くことが当面のゴールになりうるだろう。特に日本ではLINEはコミュニケーションインフラとして高いシェアを持ち、決済機能なども提供している。有力な機器メーカーもまだまだ多く、ローカルな市場であっても先行者利益は十分期待できる。そのためには現在の日本語認識機能をさらに高め、実用性を上げていかねばならない。Clova WAVEがLINE MUSICを1年間実質無料にするなどして普及を急ぐのも、まさにその第一歩なわけだ。

逆にAI機能を搭載するIoTを開発する側としては、これからはどのAIアシスタントを選択するかが、製品戦略の上でのポイントになるだろう。日本市場だけを見据えて行けばClovaは非常に魅力的だが、世界展開となるとそうもいかなくなる。複数のアシスタントに対応させるなど、これまでの製品開発とは違った難しさが出てくるだろう。LINEはClovaを中心としたエコシステムの構築を考えているようだが、こうした悩みに対して今後どのように対応していくのかが注目される。