現在はあくまでも実証の段階で、広い範囲でのサービス提供には至っていないそうだ。経験を積み重ね、どういうサービス像にしていくのか模索中ということだ。

また、人的リソースをそんなに投入できていない状況。久我山のステーションには10名のスタッフがおり、24時間体制なので交代で詰める。そのため、現在の契約者数は80軒強ほど。1軒あたり月々1万8,000円の契約料となるが、現在は利益を得るには至っていない。つまり赤字だ。

軽作業で使われる道具。IoT端末も試験活用される

ただ、「セコムは警備会社なので、赤字でもやらなくてはという使命感はあります」(牛島氏)。もちろん、今後はサービス提供地域を広げ、セコムの柱の事業に育てたいという思惑はあるだろう。まず久我山でノウハウを積むということだ。

このサービス開始の背景には、“老後を自宅で過ごしたい”という高齢者が増えている傾向がある。しかも、一人暮らしの高齢者も増加傾向だ。電球交換といった軽作業や買い物のサポート、ペットの世話といったことがメインだが、大事な役目もある。そう、高齢者の方との会話だ。

自転車で駆けつけられる。ステーション至近の薬局

契約者との会話も大切

「一人暮らしだと会話する機会がないため、私たちの訪問を楽しみにしてくださる方は多いです。ステーションにわざわざ足を運んでくださって、会話を楽しむ方もいらっしゃいます」(船山氏)。30分~1時間ぐらい会話することが多いとのことだ。

コンプライアンスについても、徹底しているという。何しろ自宅に上がって作業をするサービスだ。訪問先に不信感を与えてはならない。ただ、この点はホームセキュリティ企業として有名な同社だ。利用者には一定の安心感を持ってもらえるという。

そうそう。最後に面白い話を聞いたので、それを披露しよう。利用者のお宅に伺う際は、スタッフの所持金をチェックするのだそうだ。そしてステーションに戻ったら、また所持金をチェック。もし筆者がスタッフだったら、あまりいい気はしないが、この徹底ぶりはさすが警備会社だなぁ、と素直に思った。