そうしたなかで、2016年に、CEATEC JAPANは、展示会全体の方向転換を打ち出した。それが、「CPS/IoTの総合展示会」であった。家電見本市から、CPS/IoTによるソリューション展示のイベントへと転換することを目指したのだ。いわば、「モノ」から「コト」への展示の切り替えだ。
その成果は上々だった。CEATEC JAPAN 2016では、648社が出展、来場者数も14万5180人と、いずれも前年から上昇に転じ、今年は出展社数が667社、来場者数は前年比4.7%増の15万2066人と、いずれも前年実績を上回ることになった。
CEATEC JAPAN 実施協議会は、当初見込みの16万人こそ下回ったものの、「1日あたりの登録来場者数平均は2008年以来、9年ぶりに3万8000人を超えた」という点を強調した。過去17回のCEATEC JAPAN開催のなかでも、この水準に達したのは5回だけ。ピーク時の4万1172人には及ばないが、着実に復活の道を歩んでいることがわかる。
だが、出展社数の増加や、来場者数の増加といった数値以上に、CEATEC JAPANを評価すべきなのは、これまでCEATEC JAPANには縁のなかった新たな企業や来場者が増えているということだ。新規に出展したベンチャー企業や研究機関は、国内で44社、海外では47社に達している。
また、CEATEC JAPANに初めて訪れた来場者が全体の約3割に達したと想定しているようだ。昨年も出展社の約4割が初めてCEATEC JAPANに出展。来場者でも約3割が初めてCEATEC JAPANを訪れたという実績だった。これが2年繰り返されたことになり、逆算すれば、この2年で、CEATEC JAPANへの出展社と来場者は、大きく様変わりしていることになる。
実際、出展した企業の業種は様々だ。金融、旅行、玩具、住宅、工作機械、自動車、通信、印刷、繊維なとの企業が出展。まさにIT/エレクトロニクス産業の枠を超えた企業が参加していることで、新たな関心層を取り込めた結果に繋がったといえるだろう。
IT/エレクトロニクスは産業間コラボの新時代へ
例えば金融業界からは昨年に引き続いて三菱UFJフィナンシャル・グループが出展。さらに今年は三井住友フィナンシャルグループが初めて出展したほか、出展こそなかったものの、みずほフィナンシャルグループがカンファレンスに参加した。三大メガバンクが顔を揃えたことで、単なる電機見本市とは性質が異なることがよくわかる事例だろう。
また工作機械メーカーでは、ファナックとアマダホールディングス、ジェイテクトの3社が出展。自動車メーカーについては、ホンダ1社だけの出展だが、これは27日から開幕する東京モーターショー2017への出展を自動車メーカー各社が優先させたのが理由。来年は、2年に1回の東京モーターショーが開催されない年であることから、再び自動車メーカーの出展が期待される。
異業種企業の出展に共通しているのは、それぞれの展示内容が、IoTや上位レイヤーのCPSに繋がるという点だ。CPSやIoTという切り口の展示会へと舵を切ったからこそ、これらの企業は、CEATECJAPAN 2017に出展をしたというわけだ。
もともとITとエレクトロニクスは、あらゆる業種に波及する産業。特にITはかつて、社内業務の効率化などが目的だったものの、昨今は説明するまでもなく、顧客サービスへ活用することが当たり前になりつつある。スマートフォンやSNSが普及したことで、IoTとITの活用、そしてその先のCPSは不可欠な避けられないミッションとなりつつある。
今年初めてCEATEC JAPAN 2017に出展したある異業種企業のブース担当者は、「予想以上に多くの人がブースを訪れ、出展した手応えを感じている。消費者視点で展示を見る人よりも、一緒にビジネスを模索したいという視点で説明を求める来場者が多かった。CEATEC JAPANの終了後、どんな形で、新たなビジネスにつながるのかを期待している」と話す。
新たに出展した企業や異業種企業では、単に最終製品を見せるというよりも、未完成段階の技術やサービスを見せ、共創型の展示を行ったケースが目立っていたのが特徴だ。これまでのIT、エレクロトニクス業界のための展示会から変化していることが、こうした点からわかるだろう。