――社長就任会見では、「いまはブランド価値を高めることが重要だ」としていました。吉田社長がいうブランド価値とはなんでしょうか。

吉田氏:VAIOがPC事業を行い、さらに、EMS事業によるロボット生産を行うというなかで、VAIOの強みを生かせるものはなにか。その一番の武器は、ブランドなんです。ブランドを生かすことで、売上げがあがり、収益があがり、企業価値があがってくる。それによって、社員やステイクホルダーも幸せになります。ブランド価値を高め、それを切り口にして、成長戦略に踏み出したいと考えています。

社長就任会見ではVAIOの「ブランド価値の向上」が何度も強調された

――VAIOにはどういうブランドイメージを持たせたいと考えていますか。

吉田氏:ひとつはハイテクという部分。そして、ここに、品質という強みを乗せたいですね。

ハイテク企業は数多くあります。そこに、品質や、モノづくりの細部にこだわるという姿勢を、VAIOのイメージに結びつけたいと考えています。

たとえば、本来は裏方に回るはずのEMS事業で、みなさんがVAIOの名前を出して、それによって、最終製品の信用や信頼につなげるという動きが出始めています。VAIOの社員からは、「裏方なのに、最近、表に出ることが多いのでは」という心配の声が出ているのですが、私は、「もっと表に出なさい!」と発破をかけているんですよ(笑)。

EMS事業に関しては、「黒子からパートナーへ」という方針を打ち出しました。これはまさに、VAIOのブランド価値を活用し、さらにブランド価値を高め、それをお互いにメリットとして活用していくという活動につながるわけです。VAIOはブランド名であり、社名ですから、ブランド価値が高まれば、当然、VAIOの企業価値も高まるわけです。

――ハイテクであり、品質が高いというイメージは、すでに出来上がっている感じがしますが。

吉田氏:確かにそうですが、ただ、VAIOのブランド価値を理解している人の年齢層を見ると、ちょっと上の世代が中心になっているんです。たとえば、スマホ世代の人たちは、VAIOに対して、そこまでのイメージを持っていないのもしれません。若い世代の人たちに、「VAIOを知っていますか」と聞くと、お父さんから聞きましたという声が出るんです。VAIOを触ったことがないという世代が明らかにあるのです。

今後、VAIOブランドの価値を高めていく上では、若い人たちに対しても、VAIOのブランディングをしっかりとやっていかなくてはならないと考えています。

安曇野市内の小学生を対象に、安曇野工場の見学会を実施しているのですが、来年には累計で1万人目の小学生が訪問することになります。2020年には、小学校でプログラミング学習がスタートしますから、そうしたところを狙って、若い世代にもVAIOを訴求していきたいですね。私は、VAIOというブランド価値を、まだまだ使い切れていないという思いがあります。もっといろいろな形で、VAIOのブランド価値を使えないかと考えています。

長野県安曇野市に位置するVAIO安曇野工場

※後編へ続きます。