2020年の東京五輪の開催に向け、東京都内の再開発が活発化している。大規模なものでは、品川・田町駅周辺、渋谷駅周辺などが挙げられる。だが、巨大なビルディングや商業施設の建設だけが再開発ではない。産業を活性化させることも重要な再開発だ。

LINK-Jの拠点のひとつ「日本橋ライフサイエンスビルディング」

2016年3月、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(以下、LINK-J)が発足した。この社団法人の目的は、“ライフサイエンス”領域の“イノベーション”を推し進め、参加者の“ネットワーク”を通じ人的交流・技術交流を促進し、“日本(ジャパン)”のライフサイエンスをグローバルに広げようというものだ。まさに、法人名そのものに目的が入れ込んであるといえよう。

ライフサイエンスのシリコンバレーを目指す

ユニークなのは活動拠点を東京・日本橋に絞っていること。“グローバル”などというと、全国各地、あるいは世界各国に拠点を持つようなイメージがあるが、それでは人的交流・技術交流といった物理的な連携は散漫になる。かえって拠点を絞ったほうが、物理的な交流は活発化し、イノベーションが起きやすい。事実、米・スタンフォード大学の敷地から始まったといわれる半導体企業の集積地は、並み居るICT企業が集まり、シリコンバレーとまで呼ばれるようになった。

LINK-Jがシリコンバレーを意識しているのかどうか、いや、必ず意識していると思うが、日本橋をライフサイエンスという領域での一大拠点に、というわけだ。

そのLINK-Jの発足から約1年半が経過した。これまでに、どのような足跡を残したのか、LINK-J 理事 兼 事務局長 曽山明彦氏に話を聞いた。

曽山氏は、「LINK-Jのおもな拠点は日本橋に3カ所ありますが、現在40社強のテナントが集結しています。また、会員数も150(8月27日時点)に届き、活発に交流しています」と話す。曽山氏によると、LINK-Jが主催、共催、協賛するものや特別会員などが主催するイベント・プログラムを合わせると、現在369件(2016年8月~2017年7月) にのぼったという。つまり、1日に1回以上イベントが行われている計算だ。

また、ひとくちにライフサイエンスとはいっても、多様な企業・団体が参加している点に注目したい。創薬や再生医療、医療機器といったライフサイエンスの中心ともいえる企業群のほか、大学の研究機関・学会、これからの医療に重要な役割を果たすICT・AI関連企業、ベンチャーキャピタルやコンサルティングといった直接ライフサイエンスに関わらない企業も参加する。

「LINK-Jには、“シーズ”“アーリー”段階のベンチャーも多く参加しています。そうしたベンチャーを支援する意味で、ベンチャーキャピタルなどの存在は重要です」(曽山氏)。

こうしたベンチャーを育てることが、日本橋そのものの活性化につながる。LINK-J設立の中心企業、三井不動産 ライフサイエンス・イノベーション推進グループ 清本美佳氏は、「シーズ段階では弊社のコワーキングスペースを使っていただき、事業の成長した際にも規模にあわせたスペースに移ることも可能です。 “出世魚”のようですね」と話す。とはいえLINK-Jの門戸は、三井不動産以外のテナントにも開かれており、実際そうした企業が数多く参加しているそうだ。

そして、これらの企業が有機的に連携することで、オープンイノベーションにつながる。「これまで医薬関連企業は、クローズイノベーションが当たり前でしたが、少しずつ連携が生まれています。未来の日本橋の発展、そして日本のライフサイエンスがグローバルに広がるための第1歩です」と、曽山氏は話す。

LINK-Jの約1年半を振り返る曽山氏と清本氏。右は会員が利用できるラウンジ