どうして制服を変えるのか

制服がない業種の人間からすると、制服が変わった程度で何が変わるのだろうか、という疑問が湧くところだ。

企業の制服などの研究・振興を行なっている公益財団法人日本ユニフォームセンターによると、制服の効用は「1.働く意識が生じ、プライベートと区別がつく」「2.職業を象徴する結果、職業に対しプライドが抱ける」「3.自前の衣服が汚れたり傷んだりしないため、働きやすい」「4.顧客との区別がつく」「5.アイデンティティー、仲間意識、連帯感が持てる」に分けられるという。対外的には企業PR、イメージの統一・転換、対内的にはモラルの高揚、帰属意識対策などが挙げられる。

今回のKDDIに関しては、制服の更新サイクルという事情もあるだろうが、おそらく「2」と「5」がメインの目的だろうと推測される。つまり、KDDIという企業への帰属意識を再確認し、モラルの向上を図る、ということだ。

制服を変える真の目的

現在、KDDIは保険や金融、コンテンツ、コマース、決済、エネルギーといった、通信以外の分野にも参入し、KDDI経済圏を構築する「ライフデザイン企業」への脱皮を図っている最中だ。ショップのスタッフには、これまでとは違ったジャンルの事業にも関与していかねばならないというチャレンジがある。これには相応のモチベーションが必要だろう。

そこで制服を刷新することで、スタッフのモチベーションアップを図ったわけだ(うまくすれば接客にも変化が期待できる)。消費者としても、店舗スタッフが男性スタッフに到るまでカジュアルな制服に身を包んでいれば、これまでとは違った何かを意識することになる。対外的なアピールにも有効なわけだ。

KDDIがライフデザイン企業として消費者に周知されるには、各事業の成功はもちろん、ショップ全体の変更や、スタッフの配置など、まだまだ大掛かりな変更が必要だ。極端なことを言えば、ロゴ、あるいはいっそ社名変更クラスの大掛かりな変化がなければ、正しく認知されないかもしれない。なかなか一朝一夕にとはいかない問題ではあるが、今回の新制服の導入は、まさにその一歩というところだろう。イメージチェンジということでは、三太郎CMでは高い評価を得ているKDDIだが、店舗についてはどのように企業イメージを変えて消費者へ浸透していくのか、お手並みを拝見したい。