特に米国では、インフラや社会的な問題の解決に、スマートフォンを用いてきた節がある。インフラが充実する日本以上に、スマホがある生活の定着によるインパクトは大きかった。
そのインフラたるスマホから離れる時間を演出し始めること。これがApple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルがもたらす意味だ。
例えば米国の都市では交通インフラとなったUberなどのライドシェアサービスは、Apple Watchだけで確実に利用できるようになった。また、Apple Watch単体で、音声アシスタントSiriを利用できる点も、アップルにとって、アプリ開発者にとって、重要な意味を占めることになる。
スマートフォンからスマートウォッチへの移行がすぐに起きるわけではないが、スマホで解決した問題を手首の時計だけで解決できる。そんなシーンが拡がることは、モバイルコンピューティングや我々の日常の生活の中で、デバイスのポジションの変化や、アプリの前提の変化などがもたらされる。
しかし、前述のように、Apple Watchのソフトウェアは、極力セルラー通信を使わない前提で、通信経路の切り替えを行っている。その理由はバッテリーだ。
Apple Watch単体での連続通話は1時間、GPSを利用しながらデータ通信を行う場合は4時間のバッテリー持続時間となる。1日18時間というApple Watchのバッテリー持続時間のコンセプトとはかけ離れているのが現状だ。
そのため、あくまでも、Apple Watchのセルラー利用は一時的な場面、という前提がある。
いつ、セルラー通信を使うのか
Apple Watch Series 3 GPS+Cellularモデルを実際に使ってみると、アップルの想定と同じように、思った以上にApple Watch単体で行動するシーンは限られている。
家でiPhoneを充電しているときも、Wi-Fiがつながってしまうのでセルラーは使わない。オフィスでも、カバンの中にiPhoneがあっても、つながり続けるか、結局オフィスのWi-FiにApple Watchがつながる。
電池の持続時間から考えればきちんと最適化されている証拠でもあるが、期待した以上にはセルラー通信を実感するチャンスは少なかった。
筆者の日常の中では、ルーティンとなっているジョギングが、数少ないケースとなった。 ジョギングをしている人なら分かるかもしれないが、iPhoneをポケットの中に入れていると、走っているときに弾んでしまって据わりが悪い。そのため、セルラーモデルの登場以前から、iPhoneを家においてApple Watchのみを身につけてジョギングに出かけていた。
Apple Watchがセルラー対応すると、これまで通りiPhoneを家において出かけても、家人からの連絡を受け取ることができるようになるし、Apple Musicなどのストリーミング音楽を楽しむこともできる。
あるいは1時間ほどのウォーキングを楽しむ週末でも、Apple Watchのみで軽快に出かけられるようになった。財布も持たずに出かけても、途中で買い物メモが送られくれば、Apple Payで解決できる。