小劇場界の最先端で活躍する人気劇作家と豪華キャストが集結し、下北沢で巻き起こる”人生最悪の一日”をテーマに設定も登場人物も変わる1話完結型のコメディ・ドラマとして話題を呼んだドラマ24『下北沢ダイハード』(毎週金曜24:12~)。

このドラマは、近年注目されるテレ東深夜ドラマの面白さを象徴するようでもある。29日深夜に最終回をむかえる同作について、企画成立の背景や、キャストの魅力などについて同局 濱谷晃一プロデューサーに話を聞いた。

■濱谷晃一
テレビ東京ドラマ制作部プロデューサー、監督。バラエティ班として『ピラメキーノ』『シロウト名鑑』などを担当した後に、現職。担当したドラマは『俺のダンディズム』『太鼓持ちの達人』『怪奇恋愛作戦』『侠飯~おとこめし~』『バイプレイヤーズ』など多岐にわたる。

古田新太さんの演劇愛

――今回は古田新太さんと小池栄子さんがストーリーテラーの役割を担っていますが、このキャスティングはどのように決まったのでしょうか。

小劇場と下北沢が舞台の本作。物語の入り口と出口を背負う人は、下北沢にも演劇にも縁のある人が望ましいと考えました。そこで、下北沢で毎晩飲み歩いている演劇人の代表格である古田さんと、下北沢出身で読売演劇大賞にも輝いた小池さんの組み合わせがピッタリだという結論になりまして。スケジュールはとても厳しかったんですけど、それを押してでもこのお二人にお願いしようと。

――物語の入り口と出口のシーンが飲み屋になったのは?

ストーリーテラーというと『ヒッチコック劇場』や『世にも奇妙な物語』の1人しゃべりが思い浮かぶので、差別化するためにも2ショットの与太話から始めようと。去年、演劇を見た帰りに下北沢の焼き鳥屋さんに寄ったのですが、たまたま古田さんが自分の後ろの席で飲みながら演劇について喋ってたんですよ。その記憶があったので、飲み屋の与太話からドラマが始まったらリアルで面白いなと思ったんです。

最終話「父親になりすます男」

――実体験から繋がってたんですね。今回ご一緒されて古田さんはいかがでしたか?

衣装合わせのときに、11人の劇作家のラインナップをお見せしたら、すべての劇団を知っていて。流石だなと思いました。特に、サンプルの松井周さんに関しては「松井は昔っから変態みたいな戯曲しか書かないから、松井がテレビで何書くのか楽しみだな」って嬉しそうに仰ってましたね(笑)。打ち上げに劇作家さんも集合して、古田さんと小池さんを囲む会になりまして。そこでも古田兄さんの演劇愛は、本当に熱いんだなって感じました。

吉沢亮の美形さが話題に

――1話完結なので、毎回たくさんの方が出演しました。吉沢亮さんは、第1話の「裸で誘拐された男」では神保悟志さんの息子役を演じた上に、特別編のエピソード0.5「下北沢で○○○が見つからない男」(29日23:59まで配信)にも主演していました。特別編のトイレがないという設定はどのように浮かんだのでしょうか?

今回は、僕もほぼ毎日下北沢の撮影現場に行きまして、そこで下北沢ではなかなかトイレが借りられない大変さを実感していました(笑)。ほとんどのコンビニがトイレを貸してくれないし、ラーメン屋さんにトイレためだけに入るわけにもいかないし……。脚本の劇団アガリスクエンターテイメントの冨坂(友)さんと、制作会社ソケットの櫻井(雄一)Pと話していたら、トイレ我慢しているくらいシンプルなほうが、スピンオフの「身も蓋もないピンチ」として良いということになって。

0.5話「下北沢で○○○が見つからない男」

――0.5話を吉沢さんでというのは当初から決まってたんですか?

1話の編集中に吉沢くんの顔を見て、「本当に美形だね~」って皆で感心して。今回のスピンオフは吉沢くんの表情を堪能できるチャンスだ! と。チャップリンやバスター・キートンの時代のモノクロの映画みたいにしようってことでサイレントになりました。

――0.5話の最後と1話の冒頭が繋がってますよね。

下北沢駅の北口に公衆トイレがあるというオチなのですが、「そこって、1話に出てくるスーツケースの受け渡し場所だ!」というとこに気づいて、じゃあ、1話のプロローグ扱いにして繋げちゃおうと急遽思ったのですが、あの身代金用のスーツケースがもう用意できなくて……。そこで吉沢君に誘拐犯役の緑のマスクをつけてもらいました。あたかも最初から計算していたかのように見えませんか? 後付けなんですよ(笑)。