まちなか鳳雛塾 アドバイザー 熊野謙氏

さて、しょうもないダジャレはさておき、EdTechによるひとつの可能性を示す事例が紹介された。それは、過疎に悩む地方の教育機関での活用例だ。それについて、まちなか鳳雛塾 アドバイザー 熊野謙氏が解説した。

石川県・能登町も過疎に悩む自治体のひとつ。教育を必要とする子ども世代が激減し、それにともない学校の統廃合が進んだ。もともと農業系だった能登高校に水産系高校が統合されたが、最初は多様な一次産業を学ぶ高校として期待された。

町営塾の開設で“高校魅力化”

まちなか鳳雛塾の授業風景(提供:Studyplus)

ところが、町内の中学校からは町外の高校に進学する生徒が目立った。これは、一次産業を学ぶよりも確実に大学進学を目指せるほかの高校に人気が傾いたからだ。そこで、能登高校では学校内に公営塾を設置。大学進学を目指せる環境を整えた。さらに公営塾を発展させ、高校の外に町営の「まちなか鳳雛塾」(ほうすうじゅく)を開校。町内中学校からの進学者を増やすことに成功した。

ただ、大きな問題がある。大学進学のための専門知識を持った指導者が不足しており、映像授業に頼らざるをえない。ただ、映像授業では生徒の学習進捗状況や理解度を把握するのが難しく、適切な指導につながらない場合も考えられる。

そこで、前出したような学習管理アプリを導入。映像を使ったリモート学習をサポートする体制を強化した。また、能登町は平成の大合併で生まれた広い自治体のため、通塾に難がある生徒の指導にも効果があるという。

地方の自治体にとって“高校魅力化”は、ひとつのテーマだ。高校に生徒が集まらず廃校となってしまうと、子育て世代がその自治体にとどまらず、さらなる人口減少となり、中学校や小学校の統廃合におよぶという悪循環につながる。EdTechをうまく活用すれば、高校魅力化の一助になるかも知れないが、地方の教育機関には長いこと続いた“保守的な教育”にこだわる指導者も多く、なかなかICT化が進まないところもあると聞く。

冒頭の佐藤氏は、こんな表現をしていた。「100年前の医師と学校の先生が現代にタイムスリップしてきた場合、医師は施術を行えないだろう。だが、先生は授業を行える」。昔の医師は先端の医療機器は使えないが、先生は黒板とチョークがあれば授業できるというたとえだ。やはり、教育現場のイノベーションは早急に進めるべきだろう。