9月29日に新型のシビックが発売となるが、これは日本国内では9代目に当たるモデルで、限定販売されたシビックタイプRを除けば、実に7年ぶりとの復活となる。そこで今回は日本で販売された過去8代のシビックを、順を追って振り返ってみたい。
初代(1972~79年) - 「機械遺産」のエンジン
それまでコンパクトなモデルは軽乗用車しか持たなかったホンダが、昭和47(1972)年7月に初めて世に送り出したコンパクトカーがシビックだった。シビックは世界戦略車という側面も持っており、ヨーロッパでスタンダードであった2BOXスタイルで、独立したトランクを持つ2ドアと、リアゲートを持つ3ドアハッチバック(こちらは翌月の72年8月発売)でデビュー。搭載されるエンジンは、1,200ccの一般的な水冷エンジンだったが、それまで空冷エンジンをメインにしてきたホンダの方向転換を印象付けたモデルでもあった。
昭和48(1973)年には4ドアモデルが追加(セダンではなく2BOXスタイルのまま)されたほか、当時世界一厳しく、パスすることは不可能とまで言われたアメリカのマスキー法(昭和45・1970年12月発効)を、触媒の追加などの後処理無しでクリアできる世界で最初のエンジンとして米環境保護庁(EPA)より認められた、「CVCCエンジン」を搭載したモデルも追加している。このCVCCエンジンは、2007年に日本機械学会が創立110年を記念し制定した「機械遺産」に、マツダのロータリーエンジンとともに認定されている。
また、昭和49(1974)年にはシビック=スポーティ、というイメージを植え付けたグレード「RS」が追加。これは、「ロードスポーツ」や「レーシングスポーツ」の略ではなく、「ロードセイリング」であると発表された。
2代目(1979~83年) - ステーションワゴンタイプも追加
大ヒットを記録した初代の後を受けて登場した2代目は、「スーパーシビック」という愛称を持って登場し、初代のイメージを踏襲したモデルとなっていたが、ボディサイズはやや拡大され居住性が改善された。また、足回りも形式こそ先代と同じく4輪独立のストラット式だが、完全に新設計となり、先代でも高い評価を受けたハンドリングがさらに洗練されたものへと進化していた。ボディタイプは先代にあった独立したトランクを持つ2/4ドアモデルは廃止され、3/5ドアハッチバックへと統一され、エンジンの排気量も1,300ccと1,500ccの2種類に集約されている。
昭和55(1980)年1月にはステーションワゴンタイプの「シビック カントリー」が追加され、ボディパネルに貼られる木目調パネルは、ステーションワゴンと商用バンの境目が曖昧だった当時に、新たなレクリエーションビークルであることをアピールするのに大きく貢献したようだ。また、同年8月には別販売チャネル向けの兄弟車としてセダンボディを持つ「シビック バラード」が登場し、翌9月には「シビック セダン」としてシビックの新たなバリエーションとして追加されている。
3代目(1983~87年) - 日本カー・オブ・ザ・イヤーに
すっかりホンダを代表する車種へと成長したシビックは、昭和58(1983)年9月にワンダーシビックと呼ばれる3代目へとフルモデルチェンジ。ラインナップは3ドアハッチバックと4ドアセダンは据え置きだが、5ドアハッチバックはステーションワゴンのカントリーとクロスオーバーさせた「シビック シャトル」という新たなモデルへと発展した。
このシャトルは顔つきこそシビックシリーズそのものだが、全高を10cm以上高め、室内空間を拡大したボディを採用。今でこそ全高を高めて室内空間を確保する手法は軽乗用車などで一般的だが、その走りと言えるモデルかもしれない。なお、この3代目は第4回日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞している。
そして昭和59(1984)年には、待望のDOHCエンジンである、ZC型(1,590cc)を搭載した「シビック Si」グレードが3ドアハッチバックに追加。このエンジンは、全日本ツーリングカー選手権やN1耐久など数々のレースで表彰台を獲得。1,600ccクラスの名機というとトヨタの4A-G型が話題に上るが、当時は4A-G型の130PS/15.2kg・mに対し、ZC型は135PS/15.5kg・m(共に当時のカタログ値)とノーマルの状態でも上回る出力を発生していたのだ。
4代目(1987~91年) - B16A型VTECエンジンを採用
4代目は英語で「威厳や壮大さ」を表す形容詞を使用し「グランドシビック」と称し、先代よりもさらに大型化したボディを採用。ラインナップは3ドアハッチバック、4ドアセダン、5ドアのシャトルは変わらずだったが、足回りが全車全グレードで4輪ともダブルウィッシュボーン式になり、より一層スポーツモデルとしての戦闘力アップが図られた。
この代での最大のトピックと言えば、現在に至るまでホンダエンジンの代名詞となっている、可変バルブタイミング・リフト機構を備えたB16A型VTECエンジンを採用したことだろう。平成1(1989)年4月に登場した3代目インテグラに初めて搭載されたこのエンジンは、同年9月にこのシビックにも搭載され、「SiR」というグレード名が付けられた。インテグラに比べ100kgほど軽量なシビックは多くの走り好きを虜にしたのである。
続いては、3代目に続いて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した5代目、愛称"スポーツシビック"などを紹介していく。