公園がいちいちだだっ広い

国分寺には、たくさんの史跡が点在している。旧岩崎家別邸のある「殿ヶ谷戸庭園」や、尾張徳川家の御鷹場があったことにちなんだ「お鷹の道」、もちろん「国分寺」もある。奈良時代に建てられた「武蔵国分寺」は鎌倉時代に焼失したとされているが、その跡地は清々しいほどに広く、当時の村人が住んでいた頃のような日本の原風景を思わせる。

「都立武蔵国分寺公園」も広々として静か。旧国鉄の鉄道学校跡地を公園にしたものだ

それらの風景に出会うには、駅から1kmほど、高低差のある道のりを行かねばならない。そこは、これまでに購入した食べ歩きアイテムを小脇に抱えつつ、なんとかがんばってもらいたい。

滝のある池や、1週500mの芝生の円形広場なども。整備が行き届いている割に人は少ない

霧の舞う装置がオブジェ的にあったりもする。モノクロにしてみたらクラシックな怪奇映画のようになってしまった

昼間でも暗さを感じるほどのうっそうとした森を行くと、湧水の流れる小さな川へと出る。この湧水は「日本名水百選」のひとつでもあるという。「お鷹の道」は、この湧水に沿って350mほど続く小径だ

不意に小さな神社が現れるなど、東京らしからぬ風景が広がる

これまた不意に、森の中に蔵の野菜売り場が登場

森を抜けると「国分寺」に行き当たる。武蔵国分寺の焼失後、1733年に本堂が再建された。現在の本堂は昭和62(1987)年に改築されたもの

国分寺の楼門は、さらに日本昔ばなし的だ

石碑の足元には小さな馬も

楼門をくぐってまっすぐ行くと「武蔵国分寺跡」に出る。現在はお堂の礎部分しか残されていない。とにかく広く、草原に木が数本立っているだけの様子は「兵どもが夢の跡」を思わせる

夕暮れ時の風景はなおさら日本的に見える。秋は特にきれいかもしれない

湧水を使った日本酒を軽く一杯

お鷹の道の中には「おたカフェ」というカフェがある。NPO法人が運営している「史跡の駅」で、休憩所として自由に入ることができるのだが、せっかくならば日本酒「武蔵国分寺」(税込200円)を味わってみてはいかがだろう。国分寺の湧水を使って最初の仕込みをしているという。なお、醸造は山梨県で行っている。

おたカフェも森の中にいきなり登場する。「あ!」と思ったら後ろにあった

店内はギャラリーや小物の販売なども行っていて、2階席には武蔵国分寺建立当時を描いた絵などが掲げられている。昔話気分を盛り上げるためにも、跡地へ行く前に立ち寄って見ておきたい。

日本酒「武蔵国分寺」(試飲サイズ/税込200円)。辛口でさっぱりとした飲み口

●information
史跡の駅 おたカフェ
東京都国分寺市西元町1-13-6

国分寺は、ほかの都内の駅周辺と同様に"小ぎれいな街"として生まれ変わろうとしている。今回は紹介しなかったが、落ち着いたカフェやオシャレなワインバーなども多い。それでも、「古くから続くものを大事にしたい」という地元の人の思いは様々なところに見られるような気がした。これからは少しずつ秋となっていく。そんな一日に、時代を超えた国分寺の街歩きを楽しんでみてはいかがだろうか。

筆者プロフィール: 木口 マリ

執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。