パナソニックとジェイティービー(JTB)、ヤマトホールディングスの3社は9月21日、訪日外国人旅行者を対象に、国内における手ぶら観光を支援するサービス「LUGGAGE-FREE TRAVEL(ラゲージ・フリー・トラベル)」の取次店の募集を開始した。2018年1月からサービス提供を開始する予定だ。

(左から) ジェイティービー グループ本社 執行役員 古野 浩樹氏、パナソニック 執行役員 井戸 正弘氏、ヤマトホールディングス 常務執行役員 丹澤 秀夫氏

訪日外国人旅行者は、宿泊施設への移動や公共交通機関の利用、滞在先における保管など、大型の手荷物の取り扱いが課題となっている。また、宅配便サービスを利用するケースでは日本語で送り状を手書きする必要に迫られ、多言語対応可能なスタッフのサポートが必要だったり、受付が可能な場所が限定されていたりという課題もある。

昨年の9月、10月にサービスの実証実験とアンケート調査を実施しており、その成果をもとに、今回のサービスの販売開始に至ったという。

訪日外国人が日本を楽しめるように

LUGGAGE-FREE TRAVELサービスは、JTBの海外支店や提携代理店が提供するツアーに組み込まれる。ツアーをPCやスマホで購入すると、サービス開始時に受付用番号として、QRコードが付与される。日本の取次店である空港カウンターや宿泊施設で、QRコードをスタッフに提示し、日本語、英語、韓国語、中国語(繁字体、簡字体)の5カ国語に対応したLUGGAGE-FREE TRAVEL受付システムでQRコードを読み込ませる。

ここで事前に登録した配送情報や荷物サイズと個数、規約などを確認し、その上で荷物を預けることができる。荷物は、指定した宿泊施設や空港カウンターで受け取ることが可能だ。

ヤマトホールディングス 常務執行役員の丹澤 秀夫氏によると、午前中に成田空港に到着した訪日外国人は、都内のホテルにチェックインしてから"手ぶら観光"する場合、夜までに約3時間しか観光時間を取ることができないという。一方でLUGGAGE-FREE TRAVELを利用すれば、これを5時間に拡充できる。

「荷物から解放されたら、より多くの観光地に立ち寄りたいという回答が約70%、観光地の滞在時間を伸ばしたいが約50%、買い物時間を伸ばしたいという回答が約60%に達している。空港からホテルへ、ホテルからホテルへ、さらにホテルから空港へとサービスを拡充することで、日本滞在中に、荷物を気にすることなく観光を楽しんでもらいたい。ホテルや空港などは不在がない配達先であり、その点でも効率性が高いビジネスになる」(丹澤氏)

旅行前からその最中まで、サービスのすべてをスマホで完結でき、クレジットカード決済によってキャッシュレスも実現している。さらに荷物配送も日本語記入が不要となるため、「実証実験の実績では、10分以上かかっている配送手続きが、平均1分30秒で終了した」(ジェイティービーグループ本社 執行役員 古野 浩樹氏)という。今後はフランス語、スペイン語にも対応言語を拡充していく。

利用料金は、縦、横、高さの合計が120cm以内、15kg以内の荷物が2000円から。同じく160cm以内、25kg以内が2500円から。北海道や沖縄などには別途追加料金が発生する。

目指す"観光インフラ"

使用するデバイス、バックエンドのソフトウェアはパナソニックが提供する。

「観光事業者にとっては、専用端末設置に伴う初期導入費用が不要になり、荷物の削減や業務の効率化を実現できる。また、日本語しかできないスタッフでも受付業務が可能になる」(パナソニック 執行役員 井戸正弘氏)

すでにJTBが8月8日から、訪日外国人旅行者向けパッケージツアー「サンライズツアー」で同サービスを組み込んだ周遊コースの販売を開始済み。東京や高山、京都の人気コースから販売を開始しており、随時対象コースを広げていくという。2018年1月5日からサービスの本提供を開始する。

2020年までに全国2500施設の取次店ネットワークを構築し、訪日外国人旅行客の2.5%にあたる100万人が利用するサービスを目指す。また、レジャーショッピングなどの領域でも利用できるように、サービス内容も拡大予定で、「2020年には、200万個の荷物が利用されれば、50数億円の売上げ規模が見込める」(古野氏)という。

ジェイティービーグループの古野氏は、「観光物流インフラネットワークを3社で構築し、観光ICT分野における新たなプラットフォームとして、日本におけるデファクトスタンダードサービスにしたい」と位置づけている。