コネクティッドホーム アライアンスは9月14日、都内で記者発表会・体験会を開催した。今後、様々な分野におけるジャパンクオリティの「暮らしのIoT」サービス普及に向け、業界の垣根を越えた環境整備を進めていくという。

コネクティッドホーム アライアンスWebサイトのトップページ。ロゴデザインはデザインディレクターとして参加するフラワー・ロボティクスの松井龍哉代表が手がけた

コネクティッドホーム アライアンスとは?

コネクティッドホーム アライアンスは、多種多様な業界のリーディングカンパニーが垣根を越えて設立した企業連合体だ。

今年の7月に、東京急行電鉄やパナソニックグループ、日立製作所、日本マイクロソフト、富士通、三菱地所グループなど国内の大手企業30社が参加して発足したが、9月14日までに自動車業界や食品業界など新たに47社が参加して全77社となった(具体的な企業名は記事末)。

参加を検討中、もしくは社内の調整待ちという企業もあり、参加企業数は今後も増えていく見込みだ。ちなみに年会費は50万円で、反社会的な勢力でなければ特に入会制限もないという。

ロゴデザインは桂離宮の石畳から着想を得たという。大小無数の石が集まって一つのデザインを形作る様が、コネクティッドホーム アライアンスの「ひとまとまりであることの価値」のイメージと合致した

日本の「暮らしのIoT」は遅れている

アライアンスでは、IoTを普及させていく上で企業や業界の違いから生じる壁を取り払い、課題の発見や解決、実証実験などの研究会を開催する。研究会は「住まい」「オープンシステム」「データ活用」の大きく3つの分科会に分かれており、参加企業はこのうち最低一つへの参加が求められるという。また、カンファレンスや海外視察ツアーの実施も計画中だ。

このほかの具体的な活動やスケジュールについては未だ決まっていないとのことだが、「まずは走り始めなければならない」という強い切迫感がアライアンスの起ち上げの動機となっている。

発起人の一人である、東京急行電鉄の市来利之 取締役常務執行役員は、「IoTと言うとき、産業用IoTと暮らしのIoTはまったく違うものを指す。暮らしのIoTは人々の暮らしを豊かで快適なものにするためのもの」と指摘した上で、「暮らしのIoTはアメリカのほうが遥かに進んでいる。日本が先行しているものもないことはないが、全体的に見ると完全に周回遅れだ」と警鐘を鳴らす。

東京急行電鉄の市来利之 取締役常務執行役員

ガラパゴス化を防ぐために

IoTに限らず、日本の企業が独自に先進的なものを開発しながら、独自過ぎてワールドワイドで十分に普及が進まず、コモディティ化した海外製の別の製品や規格に主流を奪われるケースはこれまでもよく見られた。いわゆるガラパゴス化だ。

「ユーザーにとっては、どこのメーカーのものかはほとんど関係ない。それよりも、メーカーを問わずどんどん繋がって、安心して使えることのほうが魅力がある。(製品やサービスの)何が面白いか主張するだけでなく、どこに繋がるかを主張して好循環を作るべき」(市来常務)

そしてどうせ組むなら、より広い業種、より多い企業と組んだほうがユーザーのベネフィットになるし、パイを取り合うのではなくパイを育てて広げていくことが、国際的な競争力にも繋がるというわけだ。

このため、アライアンスの参加企業を見ると、同じ業界から複数社が参加しているケースが少なくない。

そんな中、異彩を放っていたのが鍵業界で6割のシェアを握る美和ロックだ。同社の和氣英雄代表取締役社長は、「鍵は4,000年の歴史を持つ個人認証ツール。それがいま、スマートフォンと融合することで、『あなたが入れる入れない』を決めるツールから、もっといろんなことができるツールになろうとしている」と述べ、アライアンスの成功が日本の国民の安心と安全、心温まる家庭の実現に繋がるだろうと期待を寄せた。

左から、フラワー・ロボティクスの松井龍哉代表、美和ロックの和氣英雄代表取締役社長、東京急行電鉄の市来利之 取締役常務執行役員、パナソニックシステムソリューションズジャパンの奥村康彦取締役専務執行役員、東京大学の野城智也教授

次のページでは、発表会や体験会で行われたデモの様子をレポートする。