9月に入りだいぶ日中の気温も穏やかになってきてはいるが、暑い屋外と涼しい室内という温度差の激しい場所への出入りを繰り返している人は少なくないはずだ。そんな状況下では「夏の冷え症」に陥る危険性がある。

寒い冬に感じる冷えと暑い夏に感じる冷えはどのように異なり、体にはどのような影響を及ぼすのだろうか。循環器の専門医であるウィメンズヘルスクリニック東京の知久正明医師にうかがった。

「夏の冷え症」に注意

冷え性かどうかを知るセルフチェック法

まずは「冷え症」という言葉の意味から確認をしよう。冷え症とは病名ではなく、手足の血行が悪くなって起きる体の状態を表現する言葉だ。自身のことを冷え症と自覚するのには、次の2タイプがあげられる。

(A)手足の温度が実際に低くなっているタイプ

(B)手足は温かいけど、寒いところに入ったときに寒いと感じるタイプ

Bは冷え症というよりも「寒がり」なのに対し、Aは体調不良につながりやすい冷え症と言える。だが、手足の温度が低いかどうかは自分ではわかりにくく、他人と比べようにも個人差があるので簡単に比較できない。

そんなときの簡単なセルフチェック方法として「耳たぶに触れる」がある。

「自分の耳たぶを触って『冷たく』感じるなら大丈夫です。もし耳たぶを『温かい』と感じるなら、手足優位型の『冷え症』の可能性があります」

耳たぶは体のなかで比較的温度が低い部位であるため、耳たぶを触って温かく感じるのは手先が冷たくなっている証拠と言える。さらに、手の先が真っ白くなっていると本当の病気になっている可能性も。

内臓まで冷えたら免疫力が大幅ダウン

知久医師は「冷たい飲み物や食べ物を摂(と)りすぎると、深部体温(内臓温度)が低下してしまいます。内臓温度が低下してしまうと免疫力が大幅にダウンして風邪をひきやすくなるし、ホルモンのバランスもくずれ、さまざまな不調を招くことになります」と話す。そして、ここに「夏の冷え症」の原因があるという。

内臓温度が低下してしまうと免疫力が大幅にダウンする

強い紫外線にさらされたり、温度差の激しい場所の出入りで体力を無意識に消耗したり、寝苦しさで不眠になったり……。これらの要因が積み重なり、夏の体は慢性疲労の状態になりやすいのだ。

慢性疲労がさらに進むと、自律神経の乱れにより体温調節ができなくなるという悪循環に陥ることもある。「寒いから温める」というわかりやすい対策ができる冬と違い、夏特有の環境とさまざまな要素が複雑に絡み合って生じる「夏の冷え症」は想像以上に厄介なものと言えるだろう。