時代の要請で出てきた岡田惠和

――今回のお話が来た時は、どのような印象でしたか?

2016年2月に怪我をする前にお話があったんですけど、怪我をして延び延びになってしまいまして。ちょっとお待たせてしてしまった部分もあるんですが、1年待っても作りたいんだという情熱を持ち、「ドラマ作ろうぜ!」というベクトルが合う方たちと一緒に仕事できるんだなという喜びを感じました。

脚本の中でも重要な言葉を顕著に感じながらシーンを消化していく感覚があって、こんな作業は、舞台以外久しくやってなかったな、というやり取りができました。新鮮であり、楽しい現場でした。

――岡田惠和さんの脚本についてはいかがでしたか?

彼はやっぱりこの時代の要請とともに出るべくして出てきた、新しく、でもちゃんと古き良き時代も知り得ている、キャパシティの大きなシナリオライターだと思います。また、寺尾さんと岡田さん、高校が同窓みたいですね。「後輩なんだ」と言ってましたから、それもちょっと嫉妬心を煽られました(笑)。

――刑事役として意識されたことは。

ドラマのセリフにもありますけど、ただ漫然と刑事をやっていて、年下の上司からかなりのことを言われるんですね。敏腕の刑事ではないので、いかに普通の感じでいられるか。刑事色もちょっと出さなきゃいけないけど、極力自分の中に普通のオヤジを意識しました。途中で、地でやればいいんじゃないかと思いましたが(笑)。

抑制の効いた芝居ができた

――今回共演された寺尾さん、鈴木さんについてはどのような印象を持たれましたか?

寺尾さんは本当に実行型ですね。いろんな色がついてる俳優がいる中で、1作1作その時についた色を落とし、生成りみたいな色に戻して、そこからまた新たな作品を始めるんだなと思いました。とっても新鮮だったし、いい感じだなと思いましたね。

京香さんも、現場ごとに全く別人になってるんですよ。以前『釣りバカ日誌』で共演した時も富山でロケだったのですが、海を見つめる京香さんを見ても、見つめ方が全然違っていて、琥珀の幸子として海を見つめているんです。お二人とも、どうやったらリアルに台詞が聞こえるかということに、最も心を砕かれているというような印象を持ちました。

抑制が効いてないと、ちゃんとした大人の青春は描けないと思うんです。どこかで踏み出しちゃうと、単なる犯罪映画や不倫映画になっちゃうので、本当に3人とも抑制の効いた芝居ができたんじゃないかなと思います。

――台詞を現場で覚えるということで有名な西田さんですが、今回の撮影現場でも、アドリブは多用されたんでしょうか?

今回もセリフは割と現場で覚えましたけど、生成り的に役を求めている寺尾さんの前ではかなり失礼なので、アドリブはあんまり(笑)。岡田惠和さんの脚本も、演者に対して気遣いのある台詞の配置がありましたので、心地よく台詞を言えました。岡田さんの台詞というのは、1回さらっと読んでると、何事も起きてないくらい平板に見えるのですが、読み込んだり声を出したりすると「こういうことなのか」とわかり、非常に楽しい演じ方ができるので、なかなかの才能だなと思っています。

――今後、テレビ東京さんに出るなら、どんなドラマをリクエストしたいですか?

そうですね。いろんなことを考えますけど、性同一性障害の息子、というか娘を持ってしまった父親と、その子供のドラマとか、やってみたいなと。共感を得られることができるんじゃないかな。息子が20歳になったら、男同士いっぱい酒を飲みたいなと思っていたら、「ごめんね私女の子なの」と言われた時の親父の思いや狼狽、そういったものがいっぺんにドラマになって、最終的にはお互いの気持ちを乗り越えて理解し合うにいたる、ある意味での差別社会にちょっと一石投じるドラマは、テレ東だったらできそうですよね。

――もう企画書になりそうですね!

ぜひ、中村中さんの歌をフューチャーしてやってみたいですね。