最初からアウトローな人間は物語でどこへいくのか

――軽くふざけた感じを、というニュアンスについては、松田龍平さんなどのお芝居にも助けられた点でしょうか?

もちろんです。不可解な松田さんとそれを受ける長澤さん、そして長谷川さん、俳優陣の演技も絶妙でしたね。高杉くんも恒松さんも、最初のうちはちょっと本気かどうかわからなくて、みなさんよく考えるとかなり深刻な状況なんですけど、どこかふざけている。そういうある種の軽さは、俳優の方たちに全面的に託しました。

ただ、最終的には深刻な事態になっていくので、軽い笑いを取りつつも、基本路線は決してふざけてはいないという微妙な線を、ほとんど俳優の方に委ねつつ、程度を探りながら撮影していきました。

――長谷川さんの演じた桜井は、あんなことになってしまって。

桜井は、実は僕の作品には出てきたことのないようなタイプの人間だったんです。これまでよく扱ったのは、みな最初は刑事やサラリーマンなどの体制側にいて、だんだん組織からはみ出てアウトロー化していく主人公。でも、桜井は最初からアウトロー的に行動する人なので、面白かったです。狙ったわけではなく、原作の桜井がそういう役だからだったんですが、最初からはみ出ている人は、ドラマを経てどこへ行くんだろう、と思っていたら、世界を飛び出してあそこまで行っちゃいましたね(笑)。

桜井は原作でもあそこまで行ってないですけど、自分の中では自然に行ってしまったという感じで、脚本を書いていて気持ちよかったです。長谷川さんもよくわかってくれて「この人ここまで行っちゃうんですね。わかりました」と言っていました。ある種のアメリカ映画には出てくるのかとも思うんですけど、その感じを長谷川さんは完璧に理解して演じてくれたので、撮っていて楽しかったですね。

――『シン・ゴジラ』とは真逆ですよね。

完全に真逆ですね(笑)

――今回はメインキャストのみなさんはもちろん、前田敦子さん、満島真之介さん、児嶋一哉さん、光石研さん、東出昌大さん、小泉今日子さん、笹野高史さんと、とにかく豪華でしたが、どうしてこれだけのキャストが集まったんですか?

脚本を読んでいただいて、これは変わっていると思われたんじゃないでしょうか。人気のある俳優さんのところにはいろんな脚本がどんどん来て、ワンシーンであっても出るか出ないかは、脚本を読んで判断されるんでしょうけど、日々いろいろ送られている脚本の中でこれは、かなり変で、つい目が留まったんだと思います。

といって別に難解ではなく、意図していることは伝わったのかなと思って。ちょっとしたワンシーンだけでも、普段要求されていることと違うことができそうで、そこに興味を持たれたに違いありません。

――ワンシーンと言っても、みなさんどんな役かすぐに思い浮かぶくらい個性的なシーンばかりで。

みなさん、おかしなことをいろいろやってくれました(笑)。そういうバラエティ的な味わいも含めて、観客の方にはぜひ楽しんでいただきたいです。

(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会