これでパトロールカーや救援車両の通行を妨げる滞留車は除かれたが、問題は路面段差と道路の開きだ。これを簡易補修すべく、機材を積載したトラックと掲示板搭載車が到着。まず、土のうを開きの手前に敷き詰めている。この土のうは新開発された「軽量土のう」で、約5kg。これまでの土のうが約25kgだったのに対し、非常に軽い。道路の簡易補修は人力に頼ることが多く、25kgだとひとつずつしか運べない。だが、軽量土のうなら複数運べ、迅速な作業が行える。訓練では片手に2個ずつ、計4個を運ぶ姿もみられた。
続いて、軽量土のう手前にスロープを組み立てていく。こちらも軽量素材でできており、迅速に運搬可能。スロープができあがると、さらに軽量土のうを積み上げ、路面段差とスロープの高さを合わせる。そして、「F-Deck」と呼ばれる軽量渡し板を、開きの上に設置して“ペグ”のようなもので土のうに固定していく。最後はゴム製のマットを3枚被せ、針金の番線でそれぞれを固定していく。このとき、進行方向手前のマットを上にしていけば、車両がとおってもズレにくくなる。
こうして簡易補修は完了。補修に取りかかってから、作業終了までは約20分ほどだった。そして、補修機材を運んだトラックやパトロールカー、レッカー車が、簡易補修箇所を移動していく。もし、この先に同じような箇所があれば、やはり簡易補修していく想定なのだろう。
一連の訓練のあと、試行中だというドローンによる道路状況確認のデモンストレーションが行われた。ドローンに期待される目的に「災害時の被害確認」が挙げられるが、まさにそれに沿った利用用途だ。首都高では、このほか平時の橋梁点検に利用するドローンも試行している。実用化の時期は決まっていないが、双方ともドローンの可能性を期待できる施策といえよう。
怠らない訓練が緊急時に生きる
さて、トンネル火災消火訓練の際は、警察や消防の姿がみられたが、今回は首都高の職員、および提携する関係者しかみられなかった。それはそうだろう。大地震のような大型災害が生じた際は、警察は交通規制や避難誘導、被災者探索・救助など、消防は火災消火や人命救助・病院搬送など、それぞれが役割を果たさなければならない。そして、道路管理者は救援ルート確保の責を負う。この際、ほかの道路管理者との協力、国土交通省や自治体との連携が“密”でなければならないことは、いうまでもない。
大地震が発生しないことに越したことはないが、いざ発生したときに迅速な対応ができないというのも大きな問題といえる。
今回の訓練を見学させていただいて、災害現場の最前線では“人”こそ大切なのだなと改めて思った。正確な状況確認ができる判断力、判断をもとに的確な作業を行う実行力、人の力を十二分に引き出す機材……訓練、機材の研究開発は、決して欠かしてはいけないといえよう。