辻氏が繰り返し説明したことは、経営陣と現場が一体となった対応だ。それに関連した印象的なエピソードが一つある。

経営陣を含めた最初の会議後、辻氏は阿多氏と喫煙室で一緒になったそうだ。普段はフランクに話しかけてくる阿多氏が、土日出勤して対応しようとしていた辻氏に対して「よろしくお願いします」と一礼したそうだ。現場と経営陣が一方通行にならず、共に解決へと歩みを進める。そういった機運をトップが自ら作る姿勢は学ぶところがあるだろう。

SBTの例で言えばCEOの阿多氏だが、一般企業においてはCIO(CISO)などがトップとして対処するケースが多いはずだ。一体感はもちろんのこと、迅速な意思決定と、拙速な対応にならないために現場の情報をしっかり吸い上げる体制の構築、そして何より「事後の対処」にフォーカスしていくことが大切であるはずだ。

この短文で言うは易く行うは難しといったところだろうが、100点満点ではないにせよ、それに近いことをSBTは行った。同社は8月中に最終報として、再発防止策の完了をアナウンスする予定だ。情報漏えいに対して感情的になるのも当然だが、冷静な分析・対処が次の漏えい抑止に繋がることも、忘れてはいけない。