――ギャバンとマッドギャランとの決戦シーンでは、石垣さんと春田さんのアフレコ対決でもあったわけですね。
石垣:そうなんですが、実はアフレコ現場ではご一緒することができなかったんです。スケジュールの都合で、僕(ギャバン)の声を先に入れて、春田さんは後からの収録だったんですよ。だから、春田さんの渋い声に僕がついていってるか、監督に何度も確認しました。やはりライバル同士の対決ということで、声の調子が双方で合っていないと燃えませんから。
春田:僕は出来上がった映像を観ながらマッドギャランに声を入れていましたが、撮影現場を見ていれば、もっと全体のイメージがはっきり分かったと思います。できれば、現場に行きたかったですね!
石垣:現場に春田さんが来られていたら、ちょっとだけ出演してもらえたかもしれませんよね(笑)。
――ヒーローとしても大先輩にあたる春田さんからご覧になった、二代目ギャバンこと石垣さんの印象はいかがですか。
春田:とてもいい青年ですよ。初代ギャバンの(大葉)健二と違って、ちょっとヤンチャっぽいところがあるのが魅力ですね。
石垣:健二さんもヤンチャなところ、ありますよ(笑)。
春田:いや~健二とは違うタイプのヤンチャだね(笑)。殺陣を見ていても、1人ですごく動きますし、やっぱり凄いなと思いました。主役に来るだけのものを持っている。普通は、稽古をしてもあれだけ激しいアクションってなかなかできないものですよ。かなり努力しているって部分が、ちゃんと画面にカタチとなって現れているんですね。
石垣:ありがとうございます!
作品作りに命をかける、受け継がれてきた思い
――春田さんは『ジャスピオン』当時、マッドギャランの人間態だけでなく、スーツにも入ってアクションをされていたんですね。
春田:そうです。毎回スーツでもやっていました。
石垣:変身前だけでなく、変身後も……というのは、ちょっと考えられないほどハードな状況ですね。
春田:まあ、当時はJACでしたから。自分がやってできることを、他の人……後輩とかにやらせるのも、なんか気が気でないという(笑)。
石垣:映画と違って、毎週一回オンエアのあるテレビシリーズのスケジュールでは、寝る暇もないくらいじゃないですか。
春田:一日中やっていたような感覚だったなあ(笑)。素面で芝居をした後、次はスーツを着てアクション、その後、またメイクをやり直して素面の撮影とか。
石垣:ゴーグルブラックやダイナブラックのときも、変身前も変身後も演じていたんでしょう。本当に凄いですよ。
春田:JACだと、そこまでやらないとダメみたいなところがありましたからね。あの当時(80年代)はこういった特撮ヒーローものは"子ども番組""ジャリ番"と言われていて、俳優じゃないみたいに思われていたこともあったんです。それでも、どんな大人向けのアクションドラマよりもすごい立ち回りとか、スタントとかやっているんですよ。それなのに評価されないって、悔しい思いもしました。
自分としては、「いつかアクションなしで演技だけでも評価される本格的な役者になってやるぞ」という思いもありました。でも、僕がヒーローを演じていたころは、作品作りに命をかけて、ずっと集中して取り組んでいましたよ。僕たちの以前からずっとこういう作品を作り続けている人たちがいて、僕たち以降の世代へと引き継いでいきました。そして今度は、新しい世代へとつながってくれたらいいなと思っています。
石垣:つながっていくといえば、僕にとってうれしかったのは『ギャバン THE MOVIE』が終わった後、翌年の映画『スーパーヒーロー大戦Z』(2013年)にもギャバンtype-Gとして主演させていただけたことです。映画1本で終わるのではなく、未来へとつなげていけたことが誇りです。そういえばどちらの映画も金田(治)監督なんですよね。もう僕はこの5年間、JAEに育てられたようなものです。
――坂本監督は少年時代から春田さんや大葉さんの活躍をテレビや映画で観ていた大ファンだとうかがっています。
春田:アフレコのときは健二が同席していたんだけれど、坂本監督が「一緒に写真撮って」って言ってきたね(笑)。
石垣:春田さんや健二さんと会ったときの坂本監督は少年の顔になっていますよね(笑)。
春田:ヒーローとか、アクションが大好きだってことは、すぐわかりました。好きだからこそ、監督の思いが画に現れるんですよ。愛がなければ、ああいった演出はできないでしょう。