メッセージングサービスが可能にした新サービス

左からポケットメニューの戸門 慶代表取締役、三井住友トラストクラブの西村智博常務取締役、LINEの田端信太郎コーポレートビジネス担当上級執行委員。3社の得意分野がうまくコラボレーションしたサービスとなる

今回のサービスを支えるインフラは、メールではなくLINEが担当する。「ごひいき予約」は直前キャンセルが対象となるため、数時間後には店に入らねばならない、そんな即時性が必要とされるサービスだ。数年前であればメールで通知しているところだろうが、メールは約半数が読むまでに6時間以上かかるとも言われており、また個別のユーザーに向けたカスタマイズも難しい。

その点、LINE公式アカウントとLINEビジネスコネクトを使った仕組みであれば、ユーザー個別にリアルタイムにメッセージを送信できる。サービス側がデータを持っていれば、居住地や料理の好みでフィルタリングすることもできそうだ。また、LINEの場合はメッセージを送ってから10~15分程度で90%近いユーザーがチェックするという傾向があり、即時性という意味でも電子メールより有利だ。逆に言えば、メッセージングサービスがここまで普及しており、企業の公式アカウントという仕組みがなければ、「ごひいき予約」のようなサービスは成立し得なかったとも言える。

筆者はダイナースクラブの会員プロファイル的に、LINEのユーザーはさほど多くないのではないかと思っていたのだが、さすがに7000万会員を抱えるだけあって、実際の年齢分布も日本人の年齢分布に近いのだという。高齢者はさすがに少ないが、50代、60代のLINEユーザーは他の年齢層と変わらないという。

また、ダイナースクラブ会員でも、特に富裕層向けのダイナースプレミアムカード会員では、30代、40代の会員比率が比較的高いという。こうした層はそのままスマートフォンの利用層、LINEの利用層と直接重なるため、全体としては30代~60代までの幅広い層をターゲットにできていることになる。きちんと勝算があると計算の上でのサービスインなわけだ。

より広い市場への適用は可能か

庶民にはなかなか縁のないような高級店にターゲットを絞り込んでいる「ごひいき予約」だが、ニッチではあるが顧客のニーズと供給されるサービスのバランスはいいため、筆者としてはサービスは成功するだろうと見ている。

ただし、直前/無断キャンセルは飲食業界全体に関わる問題なため、もっと庶民的な居酒屋などもこうしたサービスを求めているはずだ。特にSNS上では、小さな飲食店が貸切をドタキャンされて経営に大きな影響が出た例なども多く報告されているだけに、死活問題となるキャンセル枠の転売には大きな期待をしているだろう。