ダイナースクラブカードを発行する三井住友トラストクラブとLINE、ポケットメニューは共同で、昨今飲食業界で大きな問題となっている直前キャンセルやNo Show(無断キャンセル)を解消する新サービス「ごひいき予約」を開始した。問題解決の一助となることが期待されるが、市場全体への普及にはまだ課題もありそうだ。
キャンセルによる被害額はもはや社会問題
インターネットやスマートフォンの普及により、飲食店の予約が容易に行えるようになった反面、直前キャンセルや、予約しておきながら無断で来店しない「No Show」といった事態も増えている。予約が簡単なだけに、キャンセルもボタン一つで気軽に、という感覚なのかもしれないが、食材を用意したり、ほかの客を受け入れる機会や収入を失う飲食店側としてはたまったものではない。
一部の店舗ではキャンセル料を取る、悪質なキャンセル客のブラックリストを複数店舗で共有する、といった対策も取られているが、三井住友トラストクラブでは、キャンセル席を買い取ってダイナースクラブの会員に転売するサービス「ごひいき予約」を展開する。
システムとしては、「ごひいき予約」の協力店舗で直前キャンセルが出た場合、ダイナースクラブがその席を買い取り、ダイナースクラブのLINE公式アカウントを通じてダイナースクラブカード会員に告知。購入したい会員はポケットメニューが運営する「ポケットコンシェルジュ」を通じて予約と決済(決済はダイナースクラブカードのみ)をする、という流れになる。
もし複数の会員が予約を希望し、希望通りに席を購入できなかった場合でも、ポケットコンシェルジュを通じて同等の候補をリコメンドすることも行われるという。直前/無断キャンセルは「起きてしまうこと」と割り切って、次善策としての買い取りなわけだ。
席の買い取りをするだけに、当然転売が失敗すればダイナース側の損失となってしまう。サービスの成否は利用率がいかに高くなるかにかかっているが、ダイナースクラブカードは著名なクオリティカードの一つであり、「ダイナー」(diner:食事をする人)という名前のとおり、食関連に関心の深い会員を多く抱えたクレジットカードだ。有名レストランに会員向けの予約席をキープしていたり、食に関するイベントやサービスも多い。
さらに、今回「ごひいき予約」の対象となった18店舗は、いずれも予約が困難といわれる超のつく一流店・人気店ばかり。こうした組み合わせから、会員のサービスに対する興味も、需要も十分に高いと予測される。
もっとも、ダイナースクラブとしてはこのサービスを利益目的に行うのではなく、あくまで会員に対するサービスと、社会問題となっている直前/無断キャンセルに対する社会貢献として挑戦したいとのこと。店舗からの席の買い取りは本来の提供価格に近い形であり、「ポケットコンシェルジュ」の利用料など、運営にかかるコストを店にも負担させるという仕組みになっている。対象となる店舗は、スタート時は都内の16店舗のみだが、1年後を目標に100店舗程度、東京以外に大阪・京都、また他の地方都市にも広げたいとしているが、いずれも人気店が中心となるのは間違いない。