――美味しそうな料理が出てきても変わらないんですか?

それよりも「食べたくない」が先です。食欲がわかなくなって体調を崩すと、すべてが悪い方に向かっているような……そんな状態です。

――「モデルを辞める」という選択をしなかったのは、なぜですか?

モデルは辞めたくありませんでした。苦しい思いをするのも当たり前かなと思っていました。でも、それじゃダメだと思って、「食」について勉強するようになりました。いろいろなダイエットを試してみて、いちばんは食事だということに気づいたんです。知れば知るほど奥が深いし、面白くて、体も健康的に変わっていくので、どんどん勉強して。今でも学び続けていますが、おばあちゃんになっても続けたいです。

――小学校から高校までの9年間をイタリア・ミラノで過ごされたそうですね。健康オタクのお母さんの影響を受けたと聞きました。

いつも実家に帰ると、体にいい食材や料理を勧めてくれます。この本を作る時も何かあったらお母さんに電話をして、相談したり時にはバトルになったり(笑)。「食」に対する考え方とかも、「ちゃんと感謝して食べなさい」とか、そういうメンタルの部分も教わりました。

赤ちゃんの時の写真が載っていますが、顔中アトピーで真っ赤になって、痒くてただれていて。赤ちゃんの頃の写真はあの一枚以外にないくらい。お母さんは妊娠中に体に悪いものを食べたからそうなったと反省していて、そこから「食」に対する考えを改めたそうです。

――おふくろの味は?

料理は愛情表現の1つだと思っているので、愛情は常に感じています。イタリアではインターナショナルスクールに通っていたのですが、日常会話はすべて英語。全然理解できなくて、落ち込んで自宅に帰ってきたら温かい大根の味噌汁を出してくれた時はすごくうれしかったです。ホッとした時に愛情を感じますよね。そういう愛情が伝わるような料理を、これからも考えていきたいと思います。

――あとがきにはお父さんへの感謝の気持ちもつづられていましたね。どのような思いなのでしょうか。

イタリアは全く文化が違うので、そこで働くのはすごく大変なことだったと思うんです。働くことはただでさえ大変なのに、異国の地は相当なストレスだったんだろうなと……。でも、そのおかげで私はいろいろな経験をできたので感謝しています。

――イタリアに移ってどのくらいで楽しいと思えるようになったんですか。

楽しい……うーん。3カ月ぐらいで慣れて3年ぐらいで楽しい、となったような……。勉強ばかりしていたので結構大変な毎日でした。インターナショナル・バカロレアという、すべて英語の試験があったんですが、筆記やスピーチ、プレゼンテーション、哲学やボランティアもある試験です。世界中で使える資格なんですけど、その勉強をする毎日でした。

――その後、なぜ日本の大学に?

日本の大学には通いたいと思っていました。不思議なもので、イタリアに住むと日本に行きたくなって、日本に住むと海外に行きたくなります(笑)。10年近く住むと日本への憧れが次第に大きくなりました。イタリアにいた時はあまり日本に帰ってこなかったので、たまに帰ると浦島太郎状態(笑)。スーパーでも「こんにゃく売ってる! 納豆売ってる!」みたいにテンションが上がっていました(笑)。

大学生活は本当に楽しかったです。友だちもたくさんできましたし、英語の勉強もできました。読者モデルのアルバイトをして、それがきっかけで「きれいになりたい」と思いはじめて。いろいろ新しいことをはじめられる充実した時間でした。

――イタリアにいる頃にモデルへのあこがれは?

なれないものだと思っていました。芸能関係の人にも「身長低いから無理だよ」と言われていて、「いつか見てろよ!」と思って。だから、読者モデルは楽しかったです。就職活動と同じ時期に専属モデルのお話をいただいて、どちらにしようかとすごく悩みました。勉強ばかりしていて経験も何もないので。そこに飛び込む不安もありましたが、人生一度切りですから。こちらを選んでよかったです。

――相当悩まれたんですね。

そういう時は「自分は何をしている時が楽しいんだろう」と考えるようにしていて、そういう直感を大切にして選択するようにしています。読者モデルの撮影に行く時、すごくワクワクしたり楽しい気持ちになったりしていたんです。

料理もおいしいとか、うれしいとか楽しい気持ちを大切にしてフードスタイリングするようにしたりしています。ダイエット向けレシピはたくさんありますが、「痩せるため」に食べるのって楽しい? って疑問に思ってしまいます。私のレシピが、「ポジティブな気分で痩せられること」を意識したのはそういう理由です。

■プロフィール
近藤しづか
1984年10月10日生まれ。千葉県出身。イタリア・ミラノに9年間在住後、青山学院大学を卒業。大学在学中にワールドユニバーシティコンテスト日本大会優勝、『CanCam』の読者モデルを経て、2007年から2013年まで同誌専属モデル、2013年から2016年まで姉妹誌『AneCan』専属モデルを務めた。『CanCam』で"自炊モデル"として親しまれ、得意の料理を生かしてフードコーディネーターの資格を取得した。