目指すは「わかりやすさ」を主眼にした第三極

楽天モバイルは今回の発表により、データ容量や音声通話の有無などを自分で組み合わせる基本コースに加え、端末とセットになった「コミコミプラン」と、新規の「スーパーホーダイ」という3つの商品ラインが揃うことになった(ただし「コミコミプラン」は「スーパーホーダイ」と入れ替わるかたちで8/31に新規受付を終了する)。

それぞれのプランで容量が微妙に異なったりするため、単純に横並びで比較するのは難しいのだが、たとえば基本コースの3.1GBプランに5分かけ放題を付けると月額2450円になり、2980円の「スーパーホーダイS」は500円以上高い。金額的には「コミコミプランS」も同程度だが、本体価格を支払い終わった3年目以降で比較すると、やはりスーパーホーダイのほうが700円近く高いのだ。キャリアを含めて安さを売りにするプランが多いなか、あえて高いサービスを打ち出してきたというのは興味深い。

最近はMVNOの認知度が高まり、以前のようなITリテラシーの高いユーザーだけでなく、一般ユーザーの間にも「格安スマホ」としてMVNOが普及しつつある。こうしたITリテラシーの低いユーザーにとっては、あとどれだけ使えるかという計算や、なぜ遅くなるのか、という理由はどうでもよく、ある程度安ければ、実用上問題ない速度で自由に使えることのほうが大事だろう。

その点、「スーパーホーダイ」は、データ容量の残量を気にしない、いわゆる「ギガを使い切る」ストレスを気にしないで済む安心感、わかりやすさが大きな武器になる。スーパーホーダイの値上がりぶんは前述した「わかりやすさ」と最低速度の向上ぶんによる付加価値として受け入れられるという計算なのだろう。今後は「スーパーホーダイ」を中心に販売を推進するとのことなので、2年後以降は、ARPUの向上にも役立つことになる。

楽天の平井康文副社長執行役員によれば、楽天モバイルはすでに十分安価なプランを提供しており、これ以上の料金競争をするつもりはないという。また、発表会では「格安スマホ」という言葉を一度も使っておらず、キャリアとも、他のMVNOが提供する格安スマホとも異なる第三極、新しい立ち位置を模索しているのだという。「スーパーホーダイ」が提案する「わかりやすさ」と「安心感」こそが、楽天モバイルが目指す第三極としての立ち位置ということになるのだろう。

「スーパーホーダイ」がスタートする9月は、例年であれば日本で圧倒的なシェアを誇るiPhoneの新製品が発表される時期であり、同時にキャリアの縛りが解除されるユーザーも多く誕生する。MVNO各社にとってはまさに多くのユーザーをゲットするチャンスでもある。「わかりやすさと安心感」を武器にした「スーパーホーダイ」がどれだけのユーザーを獲得できるのか、第三極としての楽天モバイルの立ち位置が狙いどおりに確立されるのか、興味深く見守りたい。