――いろいろなオーディオメーカーが、マルチルーム再生(異なる部屋で同時に同じ曲を再生できるシステム)に対応する製品を展開し、チップやソフトウェアに投資していますが、オンキヨーもそのような体制づくりをしていますか。

宮崎: 特定のチップに投資してはいませんが、協業している企業はあります。ある程度チップに投資しないことには成り立たないビジネスですから。

――Amazon Echo Dotのように「各部屋に置かれる」製品を目指しますか。

宮崎: 部屋のどこに置かれるかは意識しますが、家にあるスマートスピーカーが100%弊社の製品というのは、どうでしょう……もちろんそうなれば嬉しいですけど(笑)。音楽再生に利用してほしいという期待はあります。ただ、弊社AI事業のうち、「声を拾って音を出す」のはスマートスピーカーの出番になりますが、形状にこだわらず展開したいという思いもありますね。

八木: 我々が作ったのはボイスコントロール機器ではなく、あくまでスマートスピーカー。また、「聴くスピーカーから使うスピーカーへ」という意識はあるものの、形自体はスピーカーではなく装着型/ヒアラブルでもいいわけです。どういう顧客価値を提供するか、どのようにして顧客の生活を豊かにするか。そこに我々が寄り添っていければいい、と考えています。AV機器が声で動くようになればいいね、というアイデアもそのひとつです。

AI/IoT事業推進室 副室長 八木真人氏

――オンキヨーとパイオニアの2ブランドがありますが、スマートスピーカーはどちらで展開するという方針はありますか。

宮崎: VC-FLX1はオンキヨーブランドですが、RAYZはパイオニアブランドですし、特に決めてはいません。私たちの部署 (AI/IoT事業推進室)はオンキヨー株式会社直轄ですから、オンキヨー&パイオニア (オーディオビジュアル製品全般)とオンキヨー&パイオニアイノベーションズ (ヘッドホンやDAP)のどちらでも展開できるのですよ。弊社グループはスピーカーなどBtoBの事業も展開していますし、どの会社、部署からどのような製品を出すかに縛りはありません。

――ということは、Bluetoothスピーカーの発展形のようなスピーカーだけでなく、今後いろいろな形のAI関連製品がオンキヨーやパイオニアのブランドで登場するということでもありますね。

宮崎: それは、今後の発表をお待ちください。ひとつは、先日発表したDTS Play-Fi機能搭載のAlexa対応スマートスピーカーです

――ところで、AIのプラットフォームはAlexaに絞るのですか。先日、ヒアラブルデバイスの開発を行うネイン社との協業も発表されていましたが

宮崎: 特定のAIサービスやプラットフォームに限定するということはありません。AI/IoT関連製品は、クラウドを通じて連携することでいろいろな可能性が出てきます。Amazon Alexaが提供するボイスサービスは、Skill (サードパーティーが追加できる語彙などの独自機能)として拡張できますが、それだけでは難しい機能を実現することもできますしね。かつてのオーディオ機器のように1社ですべて用意するのではなく、各社の得意技術を持ち寄りユニークな製品やサービスを開発できるところが、AI/IoT分野のおもしろいところだと私個人は考えています。